鷺谷政明の神映画レビュー

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映画「いぬやしき」感想 佐藤健より木梨憲武!知られざるノリさんの演技力(ネタバレあり)

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最後に見た木梨憲武さんのガチ演技は、2015年の世にも奇妙な物語『思い出を売る男』だった。

世にも奇妙な物語は、たいていラストに感動ものをもってくるけど、この回はまさにこれで、大号泣した。

まだ観たことがない人はハンカチを用意して絶対観たほうがいい。

 ちなみにこの『思い出を売る男』は1994年に小堺一機さんが初出。これもまた伝説回となっている。2015年の木梨憲武さんverはリメイク版。

木梨憲武さんが選ばれたのは『世にも奇妙な物語』がきっかけ

実はこの、世にも奇妙な物語を原作者の奥浩哉さん、監督の佐藤信介さんが見ていたらしく、「犬屋敷役は木梨さんしかいない!」と思ってオファーしたんだとか。

だから演技も、「あのときの感じでお願いします」と話したらしい。

このことは木梨憲武さん自らの口で語られている。

確かに『いぬやしき』の予告編を観たときから思ってた。

木梨憲武さんの演技というかキャラクターが、どこか『記憶を売る男』に似ているなと。

なので『世にも奇妙な物語』を観ていた人は、この予告編を見て、自分と同様この映画に感心を持ったはず。

それに自分も、この犬屋敷役が木梨憲武さんじゃなかったら、絶対に劇場まで観に行ってなかったと思う。他に考えられるのは、小日向文世さん、竹中直人さん、温水洋一さんあたりか…

また、これは漫画原作なので原作ファンの客も多いと思う。

たいてい漫画原作が実写化すると原作ファンから批難されるけど、この映画に関しては比較的好意的なコメントが多く見受けられた。

(以下ネタバレを含みます)

感想(ネタバレ)

木梨憲武さんの演技がもっと観たい

とにかく冒頭から始まる木梨憲武さんのだめサラリーマン演技が最高。

会社からも家族からもバカにされ、心の支えは犬の「はなこ」だけ。

この佐藤信介監督は『GANTZ』『アイ・アム・ア・ヒーロー』など、アクションものやCGものとかに強い人、っていう安直な印象だったんだけど、普通の日常描写もすごくうまいから、全然まだ観れるなと思った。

格闘シーン行くのもっと先でいいのに、と。

そうすると原作ファンには「フリ長いわ!」と言われてしまうだろうけど、個人的には全然見れるし、まだまだノリさんの日常生活シーンを見たかった。

それに、そのフリを強調することで、格闘シーンをもっと応援できる形にもなったとも思う。

唯一惜しかった点

この映画の寂しいというか切ないところは、犬屋敷が家族や会社や世間を見返してない点。娘以外。

だから格闘シーンでも誰も応援してないし、人知れず戦っているから、スカッと感がない。がんばれ!やっつけろ!という応援感情もさほど湧き上がらない。

実際問題は、犬屋敷のことが世間に知られたら大問題になるわけで、ああいう流れがこのコンセプト上は自然なんだとは思うけど。

だからせめてあの高校生の娘との描写はもう少しくっきりさせてベタに泣ける作りにしてほしかった。

だって、途中何度も佐藤健が復活するからちょっと興ざめする。ラストシーンでもまた出てくるし。あれもなぜ必要なのか。

結局、あのロボット(?)はどうなったら完全に死ぬのかがよく分からないから、感動シーンに入り込んでいけない。

落ちてきた光はなんだったのか、なぜ二人はロボットになったのかも説明がないから、いや、なくてもいいんだけど、どうなったら死ぬか(負けるか)くらいはわからないと戦いの応援のしかたを見失う。例えばターミネーターだと溶けてなくなってしまえば終わり、みたいな。

そうすると、犬屋敷が娘を救い切ったのかどうかが見てても疑心暗鬼だから感動に没入しにくい

CGが海外レベル

あとは、キャストがちょっと年いっちゃてるなというところも気にはなった。

佐藤健は29歳、本郷奏多27歳、二階堂ふみ23歳、三吉彩花21歳、この人たちが全員高校生役なわけだから、ちょっと気にはなる。外国人が見る分には全然気にならないだろうけど、日本人からすると終始違和感は拭えなかった。

それでも二階堂ふみの安定感は健在だった。昔の蒼井優を彷彿させる、なにやらせても上手な女優だ。

あと三吉彩花の生意気な娘役も良かった。ここの演技はそんなに難しいポジションではないけど。

『キングスマン』で、海外のCGはやっぱりすごいって話をしたけど、

sagitani-eiga.hatenablog.com

日本も負けてないなと思った。

この映画の制作費は不明だけど、興行収入の流れを見ていると、おそらく5~6億円あたりじゃないかと思う。監督は、「もっと予算があればな…」という思いはきっとあったはず。

でもまったくショボさはなく、本当にすごいスケールになってる。

曲で説明できたら良かった

あともう一点だけ苦言を呈すと、全体的に選曲がいまいちだった。

予告編で円広志さんの「夢想花」を使用しているところからも、この映画の選曲は迷いがあるように思う。バラエティ的な見せ方をしてもいいのか、MAN WITH A MISSIONのような洋楽ロック的ニュアンスがいいか。マッドカプセルマーケッツとかレッチリとか、その辺の当たり障りない王道路線でいったわけだけど、もしかしたら全く別の方向性もあったのかもしれない。

感動しにくいところがこの映画唯一の欠点なので、分かりやすいBGMを入れて補助しても良かったと思う。

どうとも取れるような選曲が多かったから、それももう一つ没入しきれなかった敗因なのではないかと思う。

でも木梨憲武さんの演技と、CGが生み出す迫力あるシーンを見るだけでも十分価値ある。原作も読んでみようと思った。

「いぬやしき」評価

★★★★★★★☆☆☆