2019年公開された韓国のブラック・コメディスリラー映画。監督はポン・ジュノ。
埼玉の劇場も満員だった
『カメラを止めるな』『翔んで埼玉』に次いで埼玉の映画館が満員になっている光景を見たのがこの映画。
「大ヒット上映中!」とか言われてもたいていここ埼玉では余裕で観れることが多いが、『半地下の家族』は本当に大ヒット上映中だった。
ポン・ジュノvs是枝裕和
今日本でトップの監督は是枝裕和さんだと私は思う。ただ、『万引き家族』とどちらが面白かったか、と聞かれたら、『パラサイト』と答える。それくらい面白かった。
カンヌ映画祭ではパルムドールを受賞し、2020年の第92回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4部門を受賞した。外国語映画が作品賞を受賞するのはアカデミー賞史上初めての快挙で、これは相当すごいこと。日本が韓国エンタメに追い抜かれた決定的瞬間だったと思う。
全セットという驚愕
この映画で驚くのは、半地下の家も豪邸も全部セットだったということ。キャストも驚いていたが、美術が半端じゃないと。ハエや蚊もあえて飛ばしたという。
リアリティの追求がえげつない。
冒頭の掴みの早さ
『ゴットファーザー』の結婚式然り、いい映画はたいてい掴みが早い。そこに面白さもあればいいが、例えそれがなくとも、把握できるといい。
この映画はあっという間に登場人物の関係性や環境が掴める。ここは監督の表現力がものを言う。
以下ネタバレを含みます
この映画の見どころ
私がこの映画を観て、この監督信頼できると思ったシーンは、芸術の先生を下の子に紹介しましょうか、と告げた直後に妹と共に呼び鈴を押すシーンに切り替わるところ。見事。
兄が帰って、妹に説明して、じゃあ行こう、という件を全部カットして、「ピンポーン」に繋げてしまうところ。面倒くささがない上に、笑いも生みやすい。観客をバカにしていない。信頼しているからこそできるテンポ感。
気づけばあっという間に家族4人が入り込むことになった。そこまでが一瞬の出来事のように見えた。
余計に思えたハンマー投げシーン
旅行中に家族全員で勝手にパーティーをしてしまうシーン、あそこでお母さんが庭でハンマー投げをしてガシャーン、という件がある。
後から考えれば、元ハンマー投げ選手という役の設定を活かしたシャレだったわけだが、観ているときは、あのガシャーンがきっかけで、誰か来て見つかってしまうんではないかと考えてしまった。
そんな中で実際に「ピンポーン」となるので、やはりあのガシャーンが…と思った。
ここは笑いの描写だから、韓国と日本の違いなのか、監督の笑いのセンスの問題か、そもそも私が考えすぎか。
逆に言えば、これ以外はパーフェクトだった。
詰め込んだのに面白い
コメディ、サスペンス、ヒューマン、これら全ての要素が入っているものは失敗する映画が多い。
チャーハンと肉じゃがとペペロンチーノ、和洋中全部混ぜて出されると、分けてくれと誰もが思う。
でもこの映画は、和洋中全部混ぜて出してきたのに、一つの素晴らしい料理になっている奇跡的な作品。
そして根底には強いメッセージ性が込められていて、世界中の監督が嫉妬するような映画だと思った。
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※動画では女の子(キム・ギウ)を姉、男の子(キム・ギジョン)を弟、としていますが逆でした。すいません。