鷺谷政明の神映画レビュー

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映画「海街diary」感想 ゴッドファーザークラスの完成度で文句なしのベスト邦画

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吉田秋生による日本の漫画。『月刊フラワーズ』(小学館)にて、2006年8月号から2018年8月号まで不定期連載された。

漫画を読んだ是枝監督が映画を希望し、2013年夏より脚本の執筆を開始し、撮影は2014年4月から12月にかけて行われた。2015年公開。

ゴッドファーザーとの共通点

本サイトで「別次元」と評価している『ゴッドファーザー』との共通点が非常に多い。

もちろん、ストーリーからなにから全てに至るまで『ゴッドファーザー』とはまるで違うけど、評価すべきポイントはゴッドファーザーのそれと全く同じ。

完璧な導入 

浅野すず(広瀬すず)が鎌倉に来るまでの、こんな美しい導入とはそう出会えない。

長澤まさみがトコトコ歩くところにタイトルバックという冒頭からもう、「この映画やばそう」という感じがひしひしと伝わってくる。

メインの3姉妹の腹違いの娘と父の葬儀で出会うという、この設定自体もさることながら、ここから始まるあたりも見事で、喪主の挨拶を現妻が拒むシーンもすごくいい。長女の幸田幸(綾瀬はるか)による「これは大人の仕事です」という、この映画の常識性が大衆に一発で伝わる描写。

ちなみに俺は原作の漫画も読みふけったけど、原作だとここは、もっと食らいついていた。

極めつけは、すずと3姉妹の別れのシーン。「よかったら、鎌倉に来ない?」と言われてすぐに「でも…」といったん躊躇するところが本当にいい。

大人の綾瀬はるかは「すぐあれしなくていいから」と言った後の「行きます!」というすずの一言。ここでもう泣ける

説明せずに全てを導入で伝えきるあたりが、ゴッドファーザーなみの完成度だ。

原作ありき

『ゴッドファーザー』は小説原作である。その点も本作は同じ。

そもそも『海街diary』を読んで映画化したいと希望したあたり、吉田秋生という天才と、是枝裕和という天才が出会うあたりが、とても興味深い。

この作品でスターダムに

全員がそうと言うわけではないけど、少なくとも広瀬すずはこの作品からスターダムにのし上がった。

この3姉妹、樹木希林、大竹しのぶに、是枝裕和監督という環境で育った広瀬すずにとってのは、相当な胆力がついただろう。

長澤まさみ神がかり名シーン

3姉妹、誰をとっても完璧な演技であったが、しいて一番を決めるなら長澤まさみだ。

「財布忘れた」

「財布忘れた…あ、あった」のところ。これ本当にすごいと思った。

そもそもこの映画の長澤まさみはセカチューより神がかってる。

「このまま寝る…」

男と別れて飲んで酔いつぶれてこたつで寝てる時に「いい、このまま寝る」という声の出し方。まるで演技してるとはまるで思えないリアルさ。

「乾杯」

4姉妹で海猫食堂に行くシーンで、千佳(夏帆)がメニューを決めかねているとき、佳乃が「私が決めてあげるよ」と言いつつビールを口にする前に、姉の幸に「乾杯」とするシーンも、もはやアドリブなのか、台本通りなのか、相当判別が難しいほどナチュラル。

 他にも、「クソつまらない仕事も、頑張れる」など、とにかくこの映画の長澤まさみは幸田佳乃が憑依しているかのようであった。

何も起きない美しさ

この映画は、明確な起承転結はない。訴えかけるようなメッセージ性もない。

ただ淡々と、30前後の女性たちの日常が描かれる。

葬式に始まり葬式に終わる、地味と言えば地味の話。

それなのにこれだけ見るものを惹き付けるのは、圧倒的な自然さにある。

「自然な演技で」という言葉は数多くの映像撮影現場で使われるが、これだけ「自然」という演出を自然にやってのけた作品はない。

邦画ナンバーワン作品だと思う。  

「海街diary」評価

★★★★★★★★★★ 神