映画「ゴッドファーザー」感想 全ての映像作品の頂点

f:id:sagitani_m:20190512173027j:plain

1972年公開のアメリカ映画。

監督はフランシス・フォード・コッポラ。原作はマリオ・プーゾの小説。

社会学から映画学まで

ただのマフィア映画。

なのにこの映画は、現在の社会の生い立ちや仕組みができるまでを教えてくれる。

もしかしたらそれは人類の発祥、いや、もはや地球の成り立ちまで教えてくれるかのような奥行きさえ感じる。

そして、間違いなく映画の教科書である。

あらゆるシーンの構図の美しさはさることながら、カットの切り替えや音の乗せ方、全てに至るまでが、人間が作った映像の物語として寸分の乱れもない完成度を保っている。

固定カメラの美しさは当然ながら、特にこの監督やカメラマンのすごいのは、ズームの使いかた。これはなかなか難しい

なぜこの映画は、ここまであらゆるショットが美しいのか。寄り、バストアップ、引き、俯瞰、ズーム。

どんなショットを撮ってもここまで全てが美しくなる映画というのは観たことがない

オープニングは黒沢明から引用

とにかく優れた映画というのは、導入で、映画の方向性やキャラクター紹介を端的にセリフ少なに描写しきってしまうところが大きなポイントである。

娘の結構披露宴から始まる導入はあまりに完璧で、また、ドンに相談してくるシーンも見事だ。「君が友人として頼むなら」と受け入れるあたりも、ドン・コルレオーネというマフィアの正義感をわかりやすく描いている。

ちなみに、結構披露宴から始まるという手法は、黒沢明監督映画の『悪い奴ほどよく眠る』からのインスパイア。

そういえば、『アウトレイジ』も会食のシーンからだった。

ゴッドファーザーの魅力の秘訣に気づけた人がヒット映画を作れる

長い映画であるにも関わらず、そして、決して急ぎ足でもなく淡々と進行するのに、『ゴッドファーザー』を観てる時間はおそろしく早く進む。まるで相対性理論のようだ。これはいったいどういうことだ。

もう今日に至るまでに40回以上は観てるけど、何度も観てて気づくのは、小道具のきめ細やかさ

銃の打ち方をマイケルに教えるシーン一つ切り取ってみても、背景の小道具の配置が完璧すぎる。おそらく全編に至るまでセットは使ってないにせよ、背景に映るものから演者が来てる服から、背景から、全てが美しい。

もしかしたら、小道具や服装にはさほどこだわってないのもかもしれない。いやでも、1972年に、1945年の映画を作っているわけだから、当時を再現するために、やはりこだわりはあるはず…

ただ正直この辺は日本人なので、1940年代と1970年代の町の様式の違いはたいしてわからないんだけど、つまりは、ここまで全てが完璧に美しく思える要因は、何度観てもわからない。

それが分かった映画監督こそが、歴史に残る映画を作れているのかもしれない。

全員がスターダムに

今となっては称賛の限りをされ尽くしたであろうこの映画だけど、おそらく当時はここまで歴史的な作品になるとは誰も思ってなかったとは思う。

コッポラだってまだ若手の頃だし、そこまで有名な監督ではなかったし。配給のパラマウントにいろいろ文句を言われながら作っていたわけで。

マフィア映画につき、なかなか予算もつかなかったというし。

ただこの一撃で、全員がスターダムにのし上がった。そういった意味では日本で言えば『カメラを止めるな!』のそれに近い。 

落ち目だったマーロン・ブランド(48歳)

マーロン・ブランドはすでに有名俳優だったけど、現場でのわがままさが原因で起用されることが減り、当時は落ち目だった。

そこでマーロン・ブランドはこの制作を聞きつけ、ビトー・コルレオーネ役には自分が相応しいと、綿を口に含んだイメージフィルムをコッポラに送ったとWikipediaにかかれているけど、これはちょっと違う。

実際は、マーロン・ブランドの出演を熱望してたコッポラと、それを認めないパラマウントが対立し、最終的にはパラマウントの要望でノーギャラでスクリーンテストをやらせることになった。

そこで、アドリブでマーロン・ブランド「ビトはブルドッグみたいな男なんだろ?」と言ってチーズを口に入れ、演技した。最終的にティッシュを口に詰めてやった、というのが正しい。特典映像の中でコッポラ監督自らがそう語っている。

おもしろいのは契約内容で、Wikipediaにはこうある。

この時ブランドが結んだ契約条件は、出演料ゼロ、ロイヤリティーとして興行収入の数%を上限150万ドル付で支払う、ブランドの撮影中に起きた損害は全て自腹で負担させる、というものであった。

この契約条件を見る限り、本当に当時は俳優として評判が悪かったんだろうなと思う。勝新太郎さんみたいな感じだろうか。平たく言えば若い頃の萩原聖人さんとか吉田栄作さんとか?

いろいろあったみたいだけど、マーロン・ブランドは映画の歴史に残る名演技を残した。マフィア、ボス、ドン、リーダーという役柄は数あれど、未だその上を行くものを許さない本作でのマーロン・ブランドの演技。ドン・コルレオーネの演技力を文にするのはもはや気が引ける。

アル・パチーノ伝説の始まり

俳優には、人生と同様、完璧にやらなければやらない勝負の瞬間があるが、アル・パチーノにとっては、『ゴッドファーザー』がそれだった。

アル・パチーノは、この作品から伝説が始まった。真面目な大学出がマフィアのドンになっていくという難しい役どころを完璧にこなしている。

ソニー(ジェームズ・カーン)はなんで売れなかった

ソニー役のジェームズ・カーンは、なんで売れなかったんだろう。

この映画の中で非常にいい演技をしているのに。

確かにアル・パチーノに比べればそこまで難しい役どころではないけど、それにしても短気な長男の役を120%演じきっている。

もしかしたら本当に私生活でも気が短いのか。または、本作でのみ生きる俳優だったのか。

『狼たちの午後』のジョン・カザール

フレド役のジョン・カザールは、この後もゴッドファーザーシリーズに出演を続け、『狼たちの午後』ではアル・パチーノと名演を見せた。42歳で亡くなってしまったのが本当に残念。

『ロッキー』エイドリアン!

コニー役のタリア・シャイアはコッポラの妹だけど、この人といえばやはり『ロッキー』のエイドリアン。

名バイプレイヤー

トム役のロバート・デュヴァルは『地獄の黙示録』などコッポラ作品の常連となり、その後も名バイプレイヤーとして活躍を続けた。

アル・パチーノと交際?

ケイ役のダイアン・キートンも、その後数々の映画に出演。『アニーホール』では主演女優賞も。

アル・パチーノと交際してた時期もあったとか。生涯独身。

ゴッドファーザー唯一おかしなところ

一つだけ言うなら、ソニーが、妹を殴るカルロをこらしめるシーン。水が吹き出してるところで。

あれ、あまりにソニーの手がカルロの顔面から離れているのに、OKにしてるのはなぜだろう。殴った効果音の入れ方も曖昧。

あそこだけでも寄りのカットにすれば、殴ってない感は防げただろうに。ソニーの背後からの画で良かったと思う。どうしてもあそこは引きで撮らなければいけない、なんらかの理由があったんだろうと推察される。

ゴッドファーザーは別格

そもそもこのサイトにおける神映画とこの映画は次元が違う

ゴッドファーザーは、まるでシェイクスピアのように、映画の良いところを全てやり尽くしてしまった。

映画とは、『ゴッドファーザー』と『それ以外』に分類される。

この歴史を変えることは地球が存続する限り永遠に出来ないし、全ての映像従事者は、この映画の魅力の謎を追求することに縛られる。音楽で言えばボブ・ディランがそれに相当するだろうか。

ちなみに、この作品は30周年BOXセットを持ってるんだけど、

やっぱりブルーレイBOXも買おうかなあ。。

これ、特典映像も画質いいのかな…??

持ってるかた、ぜひ教えてくださいませ。

「ゴッドファーザー」評価

★★★★★★★★★★ 神