2008年に公開された日本映画。監督は是枝裕和。主演は阿部寛。
樹木希林と是枝監督の出会い
のちに是枝作品常連となる樹木希林さんは、本作から始まった。
ここから
- 『そして父になる』
- 『海街diary』
- 『海よりもまだ深く』
- 『万引き家族』
と続く。
しかし本作ではすでに完成された樹木希林が、そこにいる。
「歩いても歩いても」考察
本作をどう読み解くか、といった考察があるようだが、この映画を考察する必要はあるだろうか。見たままでいいのではないかと思う。
本作は是枝原作の中でもっとも優れていると感じた。
「息子が帰省する一日」だけで描ききっているところに、是枝節の本流とも言える、ドキュメンタリー性を感じる。
舞台は何の変哲もない日本家屋だけ。いや、町病院ではあるけども。
この脚本が素晴らしいのは、「息子が帰省する一日」だけでありながら、
- ・息子は失業中
- ・息子は再婚して連れ子がいる
- ・兄は人を助けて亡くなっている
といった「影」が用意されているところだ。
この影が、「息子が帰省する一日」にリアリティを浮き彫りにする。
なぜなら、誰にでも親族に言いにくい影の一つや二つはあるからだ。
「歩いても 歩いても」の意味
このタイトルは、
歩いても 歩いても 小舟のように
わたしは 揺れて 揺れて あなたの腕の中
という、いしだあゆみさんの歌『ブルーライト横浜』から。
「歩いても歩いても」考察 2
もし本作を考察するのであれば、なぜこれだけの作品を作っておきながら、『海よりもまだ深く』を撮ったのだろうか。これが私は気になる。
なぜなら、本作とかなりテーマや設定が似ているからだ。主演も阿部寛さんで、母も樹木希林さんで同じ。
ちなみに『歩いても歩いても』は2008年、『海よりもまだ深く』は2016年。
単純にこういうのが好きなのかな。または、本作にどこか心残りがあったのか…。後悔なのか、リベンジなのか…、考察するなら、このあたりを考えてみたいもの。
MVPはこの人
夏川結衣さんというキャスティングがめちゃくちゃ良かったし、演技も素晴らしかった。
ほのかに見せる、旦那の母への小さな嫌味。嫁姑の描写がとてもリアル。
樹木希林さんはMVPとかどうとかという次元にいないので、本作で見事にハマったのはYOUさんだ。他のドラマでの芝居も拝見しているが、本作が一番良かった。
舞台挨拶で樹木希林さんが「是枝監督の映画に出るとね、みんないい役者に見えるのよ」とお話されているが、まさに。
見事に素のYOUさんを演出しててすごいと思った。基本、『ごっつええ感じ』ファミリーはみんな今も活躍してる。
確実に一時代、日本で一番おもしろいものを作り出していた狂気の現場で戦ってた人なんだから、それも当然といえば当然といえる。
「歩いても歩いても」評価
★★★★★★★☆☆☆
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