2013年制作の日本映画。是枝裕和監督・脚本・編集。
(以下ネタバレを含みます)
是枝裕和監督の代表作
是枝監督が全国的に有名になった代表作が、本作だと思う。
カンヌで審査員賞を受賞し、国内でも話題になり…
そんな本作は、とてもバランスが取れた良作だった。
福山雅治
「福山さんの当たり役は『ガリレオ』だけである」とよくここでも書いてるけど、本作における配役はとても合っていた。
自分は他とは違うんだ、というエリート意識が自然に出ていて、と書くとちょっと悪意あるけど、リリー・フランキー一家との対照的存在であるため、その対比がとてもわかりやすくて、よかった。
尾野真千子
なので、その妻役としての尾野真千子もとてもしっくりきたけど、ここは正直、尾野真千子と真木よう子をチェンジしても、お互い遜色なく演技はできたとは思う。
かといって、福山さんの奥さん役に木村佳乃さんみたいな人を持ってきて、あざとい対照さを出すようなことを是枝監督がするわけもなく。
おそらく、ここのエリート妻感、電気屋妻感は、そんなに重要ではない。
リリー・フランキー
重要なのはここで、作中では、野々宮(福山)一家のようにモラルがあり、健全で、斎木(リリー)一家は、なんだか貧乏で見窄らしくてといった見え方に作るため、ここが美男子だとややこしいため、リリーさんは適役だけど、次第に、野々宮一家のほうが、モラル的に見窄らしく見えてくる流れもあるため、ここの配役は結構難しい。
リリー・フランキーさんは、こういうときに持ってこいの存在で。
特にすごかったのは、金で解決しようとする野々宮に対して、下手くそに叩くところ。
あの下手くそ加減。普段そんなこと滅多にしない感。そもそも普段怒ったりもしてない感。見事。
また、野々宮の息子を迎え入れる優しい笑顔も印象的。
ここからリリー・フランキーさんは、是枝組常連となっていった。
真木よう子
是枝監督は、真木よう子然り、福山雅治さんや阿部寛さんなど、メジャーな役者さんをきちんと起用するところが素晴らしいと思う。
映画監督はどうも居丈高になりがちだけど、是枝さんは怒鳴り散らしたりするそれとは違って、とにかくリアルで自然で面白いものを作ろうという意欲のみが突出している。
起承転結をあまり見せない是枝脚本
是枝作品は、『万引き家族』に関しても『三度目の殺人』にしても、明確な結論めいたものはなく、常に観客に考えさせる作りが多いけど、本作も、「家族とは、時間か、血か」という、まさに答えが出ないような是枝監督らしい、哲学的なテーマが主軸だ。
そのため、結末も特別明確な終わり方はしないけど、ただ、他の是枝作品と比べると、かなりバランス良く作られているように見えた。
他の作品は起承転結を感じさせない、ドキュメンタリーな作りが多いけど、本作はわりと起承転結が掴みやすいため、かなり見やすい。
おそらくそれはテーマがテーマのため、ここを淡々と描いてしまうと全体があまりにもぼやけてしまうため、ストーリー性を色濃くしたのではないかと思う。
是枝流子役の動かし方
おそらく本作でも子役には台本を渡さず、口頭で演技指導したと思われるが、その最たるシーンは、斎木の息子が野々宮に「なんで?」と問い詰めるシーン。野々宮は「なんでもだ」としか答えられない。
あそこは、ほぼアドリブのように見える。
福山さんの困惑した表情が、まさに父親のそれとも見紛うシーンで、とても良かった。
吉田羊
この作品には、吉田羊さんが出演している。
冒頭、本当に一瞬、野々宮の職場で、「みんなー。リーダーのおごりで夕飯頼むけど何にする?えーっとね、ピザか釜飯か…」というだけ。
ドラマ『HERO』で話題になるのは2014年、本作は2013年なので、吉田羊ブレイク前夜。このときは髪もまだ長髪で今とは雰囲気が違うので、気づけた人はすごい。
また、中村倫也も、野々宮の後輩役でちょこっと出てる。
あと、子どもを入れ替えてしまった看護師の夫役にピエール瀧さんが。法廷の傍聴席に一瞬映る。
ということは、このあとピエール瀧さんも是枝組常連となっていった可能性もあった、と考えると、うーん、なんとも。
「そして父になる」評価
★★★★★★★☆☆☆