原作は梁石日(ヤン・ソギル)の小説。
若者描写の天才
かなり記憶に残る印象深い映画。
役者陣の演技力がすごい。実力ある人はともかく、実力ない人達も、この映画に出演したことで嫌でもスキルアップするのではないか。なんだかかなり緊張感ある現場だったそうだし。
才能がなかろうと何だろうと、ついていかないとならないというような感じがする。
崔洋一監督は随分怒鳴り散らすんだとかで。
そうなってくると、キャスティングがよかったのか、全員の頑張りがよかったのか、そうさせた監督がすごかったのか。
おそろしきビートたけし
とにかくビートさんがすごい。恐ろしい。
この人の暴力の演技って、天性的な気がする。『その男凶暴につき』『GONIN』『アウトレイジ』が顕著だけど、暴力だけでいうと、この映画が一番か。
たいてい暴力シーンっていうのは、かっこつけようとか、びびらせようとするような演技になりがちで、中学生が不良漫画に憧れるレベルの、怖い=カッコイイという程度の暴力シーンばかりだけど、たけしさんの暴力シーンは、そんなあざとさは一切なく、ただただ目の前にあるモノを破壊してやろうとするだけで、本当にリアルで怖い。
確かに、実際に怒っている人間が、かっこつけようとなんてするわけないわけで。
ただ、たけしさんの関西弁が少し定着せず、ちょっとその恐怖力を減退させてしまっているのが玉にキズ。たまーに標準語になったり、関西弁になったり、どっちつかずで、もう開き直って標準語でやらせちゃ駄目だったんだろうか。駄目だろうな。
恐怖=笑いはここから?
それと、家の扉ぶち割って表に流れ込んでって、多すぎる気がした。
何回修理してもらってんだ、という。
いくら怖い暴力シーンでも、あんまりやりすぎるとちょっと笑ってしまいそうになる。恐怖も突き詰めていくと笑いに転化できるという『アウトレイジ』手法は、このあたりからヒントを得たのだろうか。
後半になってくると、あー、多分ここでまた扉ぶち破って外での乱闘戦になるぞ、とか読めたりする。
実話が基に
実話を基にしてつくられてるだけあって、話も終始リアリティがある。
例えば、あれだけ恐ろしい父親が、最後の最後で家族に優しさを見せたりすれば、それはそれで感動する人もいるだろうし。
でもそういうこと一切なく、最後まで金俊平である。
娘の葬儀のシーンなんかも、もうちょっとわかりやすくすれば父親の愛情が出たかもしれない。
葬儀のシーンは笑わせたかった?
というか、あのシーンは何か変だ。そう、唯一ひっかかったシーン。あのシーンで催監督は何がやりたかったんだろう。
あそこは普通に、俺の娘を死なせやがっての勢いで夫をぶん殴るだけでいいと思う。それが何か、わけのわからん、娘はそこで寝てんのに、ずっと娘はどこだー!の一辺倒で、夫も、最初は俊平を恐れてびくびくしたかと思ったら、俊平にくってかかるし、その後はなぜか全員で乱闘するし、娘の死体をこっちやあっちや運んで、ってコントみたいな中途半端な微妙な笑いを誘うし。
どこか『龍三と七人の子分たち』的な。
やっぱり笑わせたかったのか。だとしたらちょっとわかりにくい。
「血と骨」評価
★★★★★★★☆☆☆