1999年公開のアメリカ映画。実話を元にしており、メリル・ストリープが演じたロベルタ・ガスパーリも実在の人物である。
あらすじ
夫に捨てられ、二人の息子を抱えるロベルタ(メリル・ストリープ)。
彼女は危険地区イースト・ハーレムの小学校の臨時教師として、ヴァイオリンの先生になり、子供達にヴァイオリンを教えることに。
言うことを聞かない子供達や、白人の音楽なんか習わせたくないという黒人の母親などと悪戦苦闘しながら、ロベルタは、ヴァイオリン、音楽の素晴らしさを子供達に伝えていく。
小さなヴァイオリンの授業が、ロベルタと一緒にどんどん大きくなっていく。
しかし、やがて市の経費節減のために音楽関連の予算がカットされることが決まり、ロベルタのクラスも閉鎖されることに。
ロベルタは生活をかけて、この決定に立ち向かう。
ヴァイオリン教師の反撃が始まる。
「天使にラヴ・ソングを」越え
この映画は、『天使にラヴ・ソングを』に近い。メリル・ストリープがウーピー・ゴールド・バーグだ。
ただ、こちらは実話に基づいた映画のため、『天使にラヴ・ソングを』のような派手さもないし、扱ってるものは歌ではなくヴァイオリンだから、地味と言えば地味かもしれない。
でも、ジーンとくる。実に良い。
『天使にラヴ・ソングを』も嫌いじゃないけど、ああいう派手な映画は、もう一度観たいとはあんまり思わない。もちろん、つまらないわけじゃないから、TVでやってれば観るけど、この映画は、DVDとか欲しくなったりする感じだ。
メリル・ストリープのこの表情…
中盤で、発表会のシーンがあるけど、あそこで「ハッ」っとなった。いきなり終わりかと。
あのシーンの前は、家をつくっている人たちを全員クビにして、さらには恋人(?)もクビにして、その直後いきなりあの発表会が来て10年後、となる。でももちろん終わりのわけはなくて、その後もしっかりと続く。
この発表会の最初のメリル・ストリープの表情はスゴイ。
シーンの繋がり的にはちょっと強引なんだけど、少し悲しげなあの表情は、前のシーンと連結していて見事。役者の力で、強引な繋ぎ合わせのシーンが、見事に繋がっている。
ホラー監督ウェス・クレイブン
随分脚色はされてるんだろうけど、その辺の流れなんかが妙にリアルっぽかったりして好感が持てる。だから脚色のしかたもうまいんだろうし、監督の力も大きい。
この映画の監督って、『ストリーム』とか『エルム街の悪夢』とかホラー専門の人。ウェス・クレイブン。ホラーかバラエティ撮れる人はやっぱりすごい。
印象的なシーン
印象的なシーンも多かった。
発表会での回収
練習のシーンで、ロベルタが「ここで伸ばして伸ばして、客をじらすの。待たせて待たせて…」と言ったまま「コーヒー飲んでくるわ、バイバイ」と言って出て行ってしまうと思わせて戻ってくる。
笑いとしてもいいけど、あのシーンは本番の発表会のシーンで効いて来る。発表会の時、狙い通り、待たせたところで客は「おいおい、どうしたんだ?」と戸惑うが再び演奏が始まると、「おー、なんだ」みたいな。先生と生徒達の間で、ニンヤリ、みたいな。ベタな手法だけど、欠かせない演出。
いつもの先生じゃない
親から「言葉が厳しすぎる」という苦情が来て、ロベルタが生徒に妙に優しくなるところ。そのロベルタの態度の変わりように生徒達は「いつもの先生じゃない」「らしくない」とか言う。
そこでロベルタは「じゃあはっきり言うわ。今の演奏も最低よ」と、いつもの様子に戻り、生徒達は笑う。
本人登場
こういうシーンもいいし、あの、生徒の一人がロベルタの物真似をしてるところに、ロベルタが登場するシーンも受けた。ああいう経験は、誰もが学生時代に似た経験があるのではないか。
癖のある先生の真似をみんなの前でしてたら、いきなり本人が現れる、という。
捨てシーンなし
細部に至るキャスティングもよかったと思うし、捨てシーンもほとんどない。
一見不要に思えるシーン、例えば、息子が喧嘩をして謹慎になるシーンや、生徒がギャングの抗争に巻き込まれ死んでしまうシーンも、その困難な状況を表すのに必要なシーンだったと思うし、実際はもっとたくさん細かい事件があったんだと思う。
音楽が好きな人、クラシックが好きな人、ヴァイオリンが好きな人はもちろん、オススメできる名作。
「ミュージック・オブ・ハート」評価
★★★★★★★★★☆