1965年の日本映画である。黒澤明監督。
三船敏郎、加山雄三、出演。
(以下ネタバレを含みます)
海外の反応
この物語の面白味は、世界中、どの時代でも通用するんじゃないかと思う。
そしてその物語を的確に表すその手法。完璧としかいいようがない。
実際この映画は当時も、第26回ヴェネツィア国際映画祭で男優賞(三船敏郎)、そしてサン・ジョルジョ賞(ヴェネツィア国際映画祭の賞の一つで、文明の発展に重要な芸術作品を対象に1956年から1968年まで授与されていた賞)も受賞している。
黒沢作品はどれも海外で評価が高いけど、この映画は今なお海外の映画ファンの評価は非常に高い。
日本人としてひいき目に見ても、これは本当にそうだろうなと確かに感じる。
黒澤明、手塚治虫…
もうこんな昔から、人が楽しむということや、感動するということを、感覚的に完璧に把握していた人がいるんだと思うと、世の映画監督たちはなかなか大変だろうなと思う。
なんでこんなすごいの先に作っちゃうんだよ、もう他にやりようなくなるじゃねーか的な。
手塚治虫を見てもなお漫画家を目指そうと思うか、思えるのか、みたいな。
黒澤監督は、脚本の力も半端じゃないし。
赤ひげはここがすごい
おなか自害のシーン
例えば、細かいことで言えば、左八がおなかと抱き合うシーンの少し手前、おなかはそっと包丁かなんかを手にするんだけど、その手元をアップにするようなことはしない。
見てる側はわざわざそこがアップにならくても気付くし、アップになったら確実に自害する気だと確信できる。
でもああいう撮り方なら、「え、何か取ったぞ今、まさか、まさか、あー!」となって、見るものを常に釘付けにする。
織り交ざるストーリー
この話全体も、幾つかのショートストーリーが織り交ぜられているのにも関わらず、一連として見事に流れていく。
だからこそ保本の心境の変化や、「お前最近先生に似てきたな」というセリフには、見ているものさえ、その場に居合わせて頷いてしまうかのよう。
これが黒沢監督の力
加山雄三さんも演技うまい。いや、うまくない。いや、うまい。
何だろう、黒澤映画の演者達は、みんなものすごくうまく感じられる。
あのおとよ役の二木てるみさんなんて本当にうまい。セリフよりも、動き、そして特に表情。見事だ。
もちろん、ゼロから全て黒澤さん一人による原作脚本ではないけれど、それを差し引いても、この人のストーリー構成力は半端じゃないと思う。
「赤ひげ」評価
★★★★★★★★☆☆