映画「マルコヴィッチの穴」感想 スパイクジョーンズの微妙なお笑いセンス映画

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1999年に制作されたスパイク・ジョーンズ監督、チャーリー・カウフマン脚本によるアメリカ映画。

(以下ネタバレを含みます)

あらすじ

才能はあるが、仕事に恵まれない人形遣いのクレイグ(ジョン・キューザック)。

妻(キャメロン・ディアス)とはすれ違い金もなく、人生に行き詰まっていた彼が食べてゆくために就職した会社は7と1/2階にあった。

そこでふとしたことから見つけた壁の穴は、なんと有名な俳優ジョン・マルコヴィッチの頭の中に続いていた…。

コメディなのか哲学なのか

この穴に入っていくと、誰でもマルコヴィッチの意識の中に入れるという。

発想っていうか、この設定が面白い。

でもそれに付随してくるストーリーが少し変で。

あれ、そっちいくんだ、という。ちょっと小難しくて、哲学っぽくなったりする。

わからなくはないんだけど、番宣であったり、タイトルやジャケットを見ている限り、そんな小難しいことは望んでなかったはず。

良くも悪くも配給会社の作戦通りといったところ。

グレイグの妻役のキャメロン・ディアスが、性転換手術の相談をしてみるわ、と言ったあたりで、俺はもうこの映画の方向性に幻滅して、そっからはもう、予想通り変な方に進み始めたので、たいして楽しめなかった。

リアクションを教えてほしい

こういう映画は、その穴に入って、マルコヴィッチの意識に入った人たちの、その後のリアクションが一番肝心で、観客にどういう感じだったか説明してほしいわけだよ。

もちろん、映画にとって不都合なところは無視してもいいかもしれないけど、ちょっとそのリアクションがダメすぎて。

妻役のキャメロン・ディアスは、男性の身体の方がしっくりきた、ってのはわかるけど、その前にマルコヴィッチの意識に入れたってことに関する驚きはあんまないようだったし。

普通なら、あの体験をして、しばらくしてから、私、あの時、マルコヴィッチになってみて思ったんだけど、もしかしたら私は…って感じになるのではないか。

それから、あのマキシン(キャスリーン・キーナー)も、いったい何を望んでるのか全くわからない。結局お前は何がしたいんだよ、と突っ込みたくなる。

笑いで押し通すのが怖くなった

その反面、小難しくしていきたいわりに、15分経った後、空中から投げ出されるってのはどーなんだ。あまりに安易で子供じみた発想だよ。俺はあのシーンは好きだけど(笑)。

だから、あの空中から落ちてくるわけわかんなさのままでよかったのに、妙に知的な方へ理屈っぽく持っていこうとした感じが嫌だね。

そういった意味でも、前半はいい雰囲気づくりができていて、いい伏線になってたと思う。グレイグが最初にマルコヴィッチの中に入って、15分後にいきなりどっかの空中から落ちてくるシーンは笑ったもの。なんでだよって。

発想がユニークなんだから、そのまま押し通せたと思うんだけどな。

よっぽどの力量がない限り、下手に勝負しない方がいい。

三谷幸喜さんならどう撮っただろう

「あの映画は、ただのアイデア勝ちだよ」って言われるのが嫌だったのか、ああいうふうに持っていったんじゃないか。

この映画の監督スパイク・ジョーンズは、ソニック・ユースやビーシティボーイズ、さらにビョークやファット・ボーイ・スリム、ダフト・パンク、R.E.M、ショーン・レノン、ウィーザーなど、ミュージックビデオの監督出身。

映像を撮るセンスは抜群なんだから、脚本家やプロデューサーが、もっとストーリーを指南する必要があったのではないか。

マルコヴィッチ本人が、その穴に入る時は、いったいどうなるんだろ!?って興味そそられたけどね。面白かったし。

この設定だけで、何通りものストーリーができると思うんだけど、他のパターンが観たかったな。別な監督がよかった。宮藤官九郎さんとか、三谷幸喜さんなら、この題材でどう撮っただろうか。

しかし、こんな穴が本当に実在したらスゴイ。

あなたは、誰かの意識に入れるとしたら、誰の頭の中に入りたいですか。または、あなたの頭の中にはもう誰かが入っていて、あなたの目で見てる光景を、その人も見ているかもしれないデスヨ。

「マルコヴィッチの穴」評価

★★★☆☆☆☆☆☆☆