いじめで自殺した生徒の真相に迫っていくのは『告白』のようであり、生徒同士が争ったり教師が生徒を殺害するのは『バトルロワイヤル』のようでもある。
つまり大枠のプロットとしては、何度も使い古された題材である。
菅田将暉の必要性
この枠は異例のヒットを飛ばした『今日から俺は』を放送していた時間帯だ。
そのため、同じ学園もので繋ぐほうが稟議が通りやすかったのではないか。ターゲットが同じであり、きちんと趣旨は違う。
だからこそ、一見不必要に見える田辺誠一のコメディブロックがあるのではないか。完全サスペンスものにしてしまうと、『今日から俺は!』の流れの視聴者が離れてしまうため、そんなに怖いドラマでもないよーという訴求が必要だった。
そう考えれば、女子中高生に圧倒的な支持を誇る菅田将暉を主演に持ってきたのも頷ける。
※本作は、かねてから教師役を熱望していた菅田将暉を当て書きして作られたという
作品のことだけを考えると、ここは必ずしも彼が必要だとは思えない。個人的には武田鉄矢さんだったら一番おもしろかったのではないかと思う。
または佐藤浩市さんとか、堤真一さんとか、ベテラン役者でも良かったし、まさかの高田純次さんとかもおもしろい。テキトー男から狂気の高田純次へ。
若い人なら山田孝之か、松坂桃李、松田龍平、なんかもおもしろそう。
20代なら…うーん、確かに菅田将暉が一番適任か。
少女たちの美しき喧嘩
特筆できるのは、女優陣の争い。
川栄李奈
まずは川栄李奈。
AKBグループ出身でもっとも芝居がうまい大島優子を完全に抜き去り、今やNHK大河ドラマ『いだてん』でビートたけしさんに真っ向から挑む演技ぶりは、本作でも健在。
今田未桜
織田裕二さん主演の月9ドラマ『SUITS』に出ていたこの子は顔がいい。表情。美人すぎす、底意地悪そうな感じが、本当にクラスに一人いるようなリアルさが見事にはまってる。
堀田真由
本作は、『チアダン』勢が結構多い。この子もその一人だが、演技にちょっと既視感あるけど、安定感もある。
永野芽郁
やはり他の女優陣に比べると頭一つ出てる。さすが大役を務めてきてるだけあって、難しい役どころを見事にこなしている。
上白石萌音
水泳のエリート選手役がすごくよく似合う。この子はいじめっ子役できないだろうなあ。そう考えると永野芽郁はいじめっ子役も見事にできてしまうだろうから、末恐ろしい。
弱い男性陣
男優が弱い。
全体的に演技が単一的で、うまい人が一人もいない。
ただ、高校というところは、女子が大人で男子は子供という構図が如実に浮き出る場所なので、誰を配置しても似たようなことになるかもしれない。
とはいえ、もう少し存在感や将来性を感じられる伏兵がいたら良かったとは思う。
「3年A組」視聴率
第1話 10.2%
第2話 10.6%
第3話 11.0%
第4話 9.3%
第5話 10.4%
第6話 11.7%
このドラマは、この教室で犯人探しをずっとやっていくのか、という未来予測を視聴者にさせてしまうと、飽きられてしまうため、常に真相に近づくかのような緊迫感を、限られた状況下で毎回演出しないといけない。
海外ドラマがこのあたりが巧みだが、本作の3話目までは見事に引っ張ってこれたように思う。
しかし、4話目で少々ダレた。5話目を見ると、4話目で5話目の展開を持ってきたほうが良かった。
実際、4話目で視聴率は一気に落ちている。それは、3話目である程度底が知れてしまったからだ。
一歩遅かった感はあるが、ここから急展開を起こしてもう一度視聴者を戻らせることができるかどうかは、6話目がポイントだった。
ここで、圧倒的な展開が起きない限り、視聴者はもう戻らないと思うが、田辺誠一が真犯人という、なんとも微妙な顛末で終わった。
ただ、5話目以降、見事にV字回復をしているので、菅田将暉の現代っ子に送る命の授業が功を奏しているし、また、くら寿司をきっかけに再び社会現象になっているSNSへの軽率な投稿が問題になっていることも、このドラマと世相をマッチし、注目を受ける要員となった一つとも言えるだろう。
殺害できない難しさ
映画であれば殺害できただろうが、現代ドラマの倫理上、やはり殺しはしないんだろう、という思いが視聴者には前提としてあるため「殺すぞ」という、本来であれば緊迫するシーンの説得力が薄くなってしまうところが難しい。
結果、殺してなかったという展開だし、おそらく最終回まで死亡者は出ないだろう。
ドラマ冒頭部分から構築してきた「恐怖」はとうに影を潜めていて、命をかけた熱血授業に視聴者を運ぼうとしている。
そうなると、やはり菅田将暉だと年齢的にもその説得力が薄くなってしまうのが手痛い。
圧倒的な脚本力が不可欠
とすれば、視聴者を何度も欺くような、まさに海外ドラマのような演出が必要になる。
そのわりに、大友康平さんと共犯者だとわかるシーンはあまりにもあっさりしすぎていたし、内通者も引っ張ったわりには普通に出てきた。このあたりが一貫して演出の弱さを感じる。
展開としておもしろいのは、上白石萌音を死に追いやったのは実は菅田将暉だったとか、または永野芽郁以外は全員上白石萌音を死に追いやったの共犯者だったとか、または永野芽郁が黒幕だったとか、大友康平さんではなく、椎名桔平さんが共犯者だったとか、ちょっと発想は突飛だが、要はそれくらい視聴者の目を欺く圧倒的な脚本だったらおもしろいと思う。
ただ、現状見てる限りではあまりその気配はなく、小さくまとまっていってしまう兆候にあるが、「軽率なTwitterへの投稿が、家族や友人を死に追いやる」という強烈なメッセージが時代とマッチしているので、演出はそちらへ傾倒していくだろう。