鷺谷政明の神映画レビュー

おすすめ映画紹介

ドラマ「3年A組」全話視聴率!ドラマ史に残る問題作のキャスト評価と感想

f:id:sagitani_m:20190214162717j:plain

途中どうしても中だるみが発生したのは否めないけど、とても挑戦的なプロットで、大健闘した。

『3年A組』全話視聴率 

第1話 10.2 %
第2話 10.6%
第3話 11.0%
第4話 9.3 %
第5話 10.4%
第6話 11.7%
第7話 11.9%
第8話 12.0%
第9話 12.9%
第10話 15.4%

日曜22時30分という時間帯でありながら今季トップの座を奪い、『相棒』や『いだてん』をも抑えてしまった。

世の中的には十分騒がれているけど、もっと騒がれても良い。これは相当な偉業

『今日から俺は!』全話視聴率

同時間帯で話題になった前クール『今日から俺は!』の視聴率と比較しても

第1話 9.8% 
第2話 8.3%
第3話 8.9%
第4話 9.1%
第5話 9.8% 
第6話 9.4%
第7話 10.6%
第8話 9.4% 
第9話 10.8%
第10話 12.6%

見事に上回っていることがわかる。

若者のテレビ離れが激しいと言われていながら、高視聴率を取るテレビ番組は昨今非常に多い。結局、おもしろいものは、観るなって言ってもみんな観る。

テーマを見せない作り

このドラマの一番挑戦的なところは、ドラマのタイプをすぐに明らかにしなかったところ。

つまり、一見してカテゴライズされないような作りに、意図的にされていた。

猟奇的な教師ものなど、いわゆる『バトルロワイヤル』的なホラーサスペンスかと思わせるやいなや、田辺誠一扮する武智大和の妙なコメディタッチが、その印象を覆す。

そして『告白』のような不穏な空気を持たせつつ犯人探しに迫るタッチを見せたかと思えば、実に軽快なクロマニヨンズのロックナンバーで、平穏そうなエンディングシーンで毎回幕を閉じる。

つまりは、菅田将暉演じる柊の狙いが簡単に視聴者に伝わらないようにしたかったのと、実験的な演出を試したかったのと、両方あったのではないだろうか。

朝礼ダンス

この手法は見事に当たり、テレビを見ないと言われる中高生を中心に支持され、劇中に出てくる朝のダンスも、もれなくTikTokを中心に中高生たちにネット上で拡散されていった。

ドラマの根幹

そしてその層にこそ伝えるべきSNSの恐ろしさを、このドラマは見事な手法で伝達した。今もっとも誰もが感じていた時代の空気のようなものを、最高の形で体現してみせた。

ちなみに、マインドボイスという架空のSNSツールは当然Twitterのことだが、Twitterを示唆するような表現が入るとTwitter社から待ったが入ってしまうので、痕跡が残らないように仕様は変えられている。

5chとTwitterの間くらいのものに。

キャスト評価

そう考えると、やはり主演は菅田将暉しか考えられないかもしれない。もともと菅田将暉がかねてから熱望した教師役ということもあり、彼がクロマニヨンズのライブで『生きる』と出会って主題歌になっていることからも、柔軟で挑戦的な内容に仕上がっていったこともうなずける。

脇役に椎名桔平さんや大友康平さん、田辺誠一さんといった粋なチョイスも鮮やかで、女性陣の活躍も素晴らしかった。

男性陣は、前回記事にも書いたが非常に残念だった。が、あの中二病感が本当の高校生のリアリティを出していた、とも言い換えられる。

最終回感想

『未成年』との比較

最終回に関して言えば、柊が屋上から世間に投げかけるシーンが少し弱く感じた。あそこは演出でもっと臨場感を出せたのではないか。

ありがちではあるが、例えば都内の大型ビジョンや、各家庭のTVや、スマホを見てるシーンをもっと散りばめても良かった。日本中がそれを見ているように。

屋上から社会への主張といったところで必ず比べられるのは『未成年』の最終回だろうが、いしだ壱成演じる戸川浩人が社会に対して叫んだシーンは確かな迫力があった。

それは演技力といったところに限らず、演出的なところで。

どうしても、パソコン画面に向かってだけのメッセージは、画として見ると少し弱く感じる。

安っぽいセット

それから、あの屋上と廊下を遮っていたコンクリートはなんとかならなかったか。

小道具感がすごくて、それを重いものに見せるような演技をあの生徒たちに託すのはそれこそ荷が重い。明らかに、軽い発泡スチロールみたいなものを運んでるように見えてしまった。

もしかしたらこのドラマは、制作チームもかなり若いチームで作られてるのかもしれない。だから細かいところの詰めが甘く、逆に言えば、だからこそこれまであまり類を見ない独創的なものができたのかもしれない。

ドラマ史に残る問題作

このドラマは、時代の変遷とともに存在感を増すと思う。そして、若い人たちはこの警告を、しっかりと受け止めたようだ。

Twitterを見ると、「感動した」「SNS気をつけよう」というコメントの中に「こんな先生がいたらなー…」っというものもあるけど、人は、学ぼうという気持ちさえあれば、何からでも学べるもの。

その気持ちがない限り、どんないい先生や人と会っても何も学べない。このドラマの第一話目を思い出してみるといい。

レッツシンク。

ただ、意外とおじさんおばさんのほうが、未だに罵詈雑言をネット上にばら撒いてたりもするんだけどね。変な動画上げないくらいで。