鷺谷政明の神映画レビュー

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ドラマ「二つの祖国」感想 豪華キャストの名演をふっ飛ばす選曲で伝説の作品に

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ドラマを作らせたら今もっともイケてるテレビ東京が、山崎豊子原作のドラマを作るとなれば、出たい役者はたくさんいると思う。

まるでNHK制作かと思うほどの豪華なキャストで固められた本作、BGMの選曲で全部ダメになってしまっていた。

テレビ東京『二つの祖国』キャスト

天羽賢治 - 小栗旬
井本梛子 - 多部未華子
天羽エミー - 仲里依紗
天羽忠 - 高良健吾
天羽勇 - 新田真剣佑
チャーリー田宮 - ムロツヨシ
井本広子 - 池田エライザ
井本せき - 山下容莉枝
小田万里子 - 橋本マナミ
小田千代 - 根岸季衣
天羽春子 - 原菜乃華
松井竹虎 - 仲村トオル
オーソン相川 - 田中哲司
池島努 - 柄本佑
倉石隆信 - 甲本雅裕
横山喜三郎 - 中村雅俊
東條英機 - ビートたけし(特別出演)
大川周明 - 笑福亭鶴瓶(特別出演)
広田弘毅 - リリー・フランキー(特別出演)
広田静子 - とよた真帆
大野なみ - 柴田理恵
ジョー北川 - 渡辺邦斗
久保作造 - 山中崇
鬼塚誠 - 今野浩喜
伊佐新吉 - 長田成哉
山崎総一郎 - 髙橋洋
山田英世 - 関健介
杉田新平 - 大藏基誠
ケネス阿川 - 福山翔大
ジョン小寺 - 浜田学
ホセ森 - 中島歩
小松原彌之助 - 福田雄一(友情出演)
小松原実花 - 蜷川実花(友情出演)
小松原玲子 - 吉倉あおい
畑中万作 - 泉谷しげる
天羽鷹 - 余貴美子
天羽テル - 麻生祐未
天羽乙七 - 松重豊
ナレーター - 阿川佐和子

キャストはご覧のように、めちゃくちゃ豪華。

特に良かったのは、仲里依紗。やっぱり上手い。

小栗旬も賛否あるみたいだけど、とても良かった。誠実ながらも、時代に翻弄されてしまうリアルな姿が見事に描写されていた。

福田雄一さん出てるとは全く気づかなかったなあ。あと蜷川実花さんも。

ムロツヨシさんがハーモニカを吹くシーンの二人ですね。

大川周明が東條英機の頭を叩く実際の出来事を、笑福亭鶴瓶さんとビートたけしさんで再現されているのもおもしろかった。

また、さらにおもしろいのは国際派キャスト。

ウェッブ - モーリー・ロバートソン
ムーラー - セイン・カミュ
ホプキンズ - 厚切りジェイソン
マイケル坂田 - ハリー杉山
クラーク - チャック・ウィルソン
パーカー - ケント・ギルバート
ピーターソン - ダニエル・カール
カミング - デーヴ・フロム
ケヴィン - ジョージ・ウィリアムズ
アメリカ人技術者 - 村雨辰剛
愛新覚羅溥儀 - 織田信成

チャックウィルソンとかセインカミュとか、懐かしい顔ぶれも。

セイン、すっかり老けましたね…。

厚切りジェイソンは、声で「あれ?もしかして?」と思ったけど、演技が自然すぎて、気づかなかった。

ダニエル・カールもすごく上手で、めっちゃ馴染んでた。モーリーも馴染んでたなあ。

BGMがなければ名作だった

ビートルズやイーグルスといったあまりにも有名な曲を使うと、その曲のイメージに引っ張られてしまうため、本来使うのはなかなか難しいんだけど、あまり深く考えず軽々に使用していたように思う。

そもそもビートルズはイギリスだし、戦場に行く云々のくだりでエアロスミスの「I Don't Want To Miss A Thing」をかけるのはどんなセンスかと。カバーバージョンではあったけど。

映画『アイ・アム・サム』みたいに、全編ビートルズカバーでうまくいったパターンもあるけど、あれはきちんと意味があるし、ストーリーに沿っているし、ゴチャゴチャしていないし。

sagitani-eiga.hatenablog.com

音をメインで聴かすような映像作品もあるけど、『二つの祖国』はやはりストーリーありきの作品ではないだろうか。

とにかく、シーンに全くそぐわないヘンテコなチョイスで、「こんないいい歌あるんだぜ」「この名曲のカバーバージョンあるんだぜ」と終始言われているような、高校生時分に近所の兄ちゃんに教わるならまだしも、このドラマ中にそれを教わるのはなんとも。

同時に、BGMでここまで印象が変容してしまうものなのかということも感じた。

脚本もさることながら、それに呼応するように役者陣の演技も素晴らしく、BGMがないシーンでは何度も泣きそうになった。でもBGMが流れると同時に興ざめした。

ここまでの作品はそうない。ある種、本作は記憶に残る作品となった。

撮り方も実験的

BGMが一番おかしかったけど、カメラワークも変なズーム然り、カットの切り替わりから、色味から何からとにかく不自然で、まるで何人かのスタッフが全員各々の感覚で勝手に作ったものを繋げたような印象さえあった。

この記事にあるように、

www.oricon.co.jp

監督によれば、あえて実験的な手法に挑戦したようだけど、失敗に終わっている。

世間の批判もかなり厳しく、「この作品はTverで見たほうがいい」という声も多い。

verだと、権利の関係で曲が差し替わっているため、ドラマに集中できるらしい。

それなら俺もTverで見たかった。

監督のチョイスミス

ありきたりの手法を壊す、挑戦的なやりかたはテレ東らしくて、とてもいいと思う。

でもそれを、なにもこの作品でやらなくても良かったのではないか。

プロデューサーの監督チョイスミスだった。

山崎豊子さんがご存命でらしたら、絶対にOKしていなかったと思う。