鷺谷政明の神映画レビュー

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ドラマ「チアダン」はなぜ失敗してしまったのか 最終回視聴率は?

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ドラマ「チアダン」最終回の放送終了。

まずは視聴率を振り返ってみる。

ドラマ「チアダン」視聴率

STORY1 目指せ全米制覇! ダメ高校生ができっこない夢に挑む奇跡の物語
脚本 : 後藤法子 / 演出 : 福田亮介 8.5%

STORY2 今これがやりたいんや! 夢を追う新たな仲間
脚本 : 後藤法子 / 演出 : 福田亮介 8.6%

STORY3 初大会で大失敗…ダメ顧問太郎が涙のエール
脚本 : 徳尾浩司 / 演出 : 金子文紀 6.6%

STORY4 誰かを笑顔にする為に…ダンスが起こす奇跡
脚本 : 徳尾浩司 / 演出 : 金子文紀 7.3%

STORY5 仲間を傷つけるのは許さん! 学園祭の約束
脚本 : 徳尾浩司 / 演出 : 福田亮介 5.5%[26]

STORY6 太郎先生に届け命と涙のエール! 顧問不在で廃部命令
脚本 : 木村涼子 / 演出 : 岡本伸吾 6.1%

STORY7 20人での初大会! 夢も仲間も絶対捨てない
脚本 : 渡邉真子  / 演出 : 渡部篤史 7.1%

STORY8 暴行疑惑…大会への出場取消し!?世界中が疑っても仲間を信じる!!
脚本 : 徳尾浩司 / 演出 : 福田亮介 6.6%

STORY9 ケガで全国大会出場断念!?復活の太郎先生が導く奇跡
脚本 : 木村涼子 / 演出 : 岡本伸吾 6.8%

STORY10 夢は叶う人は変われる!今夜、奇跡のラストダンス
脚本 : 木村涼子 / 演出 : 岡本伸吾 7.9%

6話目からおかしくなった

チアダンが完全におかしくなってしまったのは、6話目で、太郎先生(オダギリジョー)が事故に遭ってからだったように思う。

なぜあそこで事故に遭わせないといけなかったのか、脚本の意図が全くわからない

8話目の暴行事件疑惑もそうだし、9話目の土屋太鳳の怪我も。なぜ必要だったのか。メンバーのあの突き放し方なんて特に謎すぎる。ネットでも「なんだそりゃ」と大ブーイングだった。

多少あざとくても、キャストの良さと、振り切った青臭さでこれまでは楽しく見れたが、オダギリジョーの交通事故を皮切りに一気に崩壊した。

視聴率が伸びなかったから路線変更した?

同情できる点があるとすれば、完璧に見えたプロットと話題性とキャスティングでスタートにしたにも関わらず、視聴率が振るわなかったこと。

これは憶測の域を出ないが、解決策を求め内部でいろいろ揉めたことが、迷走のきっかけになってしまったのではないか。

結果が得られないとここまで迷走してしまうものかと、ゾッとしてしまうほどの崩壊っぷりだった。

展開が単純で軽薄になった

このドラマの前半が良かったのは、ロケッツ誕生までをしっかり描けたところ。

委員長の加入までがハイライトだった。

後半では、全国大会に行くまでをじっくり描けば良かったのに、視聴率が悪かったからか路線変更し、チープな感動を連発する内容に変わってしまった。

事件をおこし、揉めさせ、解決する、といった流れを単発でどんどん発生させることでてっとり早い感動を得ようとし、それがあまりにも見え透いてしまい、どんどんチープになった。

ロケッツ誕生以降のダンス部との抗争ももっと長くて良かったし、とにかくそこから起きる問題がすぐに解決してしまうから、見てても、「どうせあと数分後には解決するんだろう」という見方になってしまうので、大きな緊張も期待もしない。

そのため、この先どうなってしまうのか、というドキドキ感がまるでなくなってしまった。

野球部員との恋の行方も結局半端なままでなし崩しになってしまったし。

視聴率のテコ入れが失敗した

素人同然だったメンバーがあの速度感で全国大会にまで行かせる説得力を出すためには、もっと過酷な現実を描く必要があったし、ドラマとしてもそちらのほうが良かったはず。

チンケな恋愛描写や、すぐに解決する家庭の事情、怪我、仲間割れなんてどうでもいい。

どうすれば全国大会に行けるのか、そのためにはどうすればいいか、そしてそこに向かっていく葛藤と衝突を徹底的に描くべきであった。

映画「チアダン」は2時間でそれを実現できたわけだから、ワンクールでそれができないわけがない。

例えば、何度やってもうまくできない大技があって、それがうまくいけばポイントが高くなるから成功させたいが、それを成功させるには怪我のリスクもあり、誰かやるかなどの人選の難しさもあり、そこで衝突が起きたり、怪我があったりといった描き方のほうが感情移入しやすかったように思う。

突然怪我して、突然喧嘩して、すぐ復活して、の繰り返しだから、どうにもついていけない。

明らかに後半から脚本、演出が悪くなった。視聴率が伸びなかったからのテコ入れだったのだとは思うが、それが完全に失敗していた。

たいていドラマの演出家は同じ人が最後までやることのほうが少ないが、脚本家もコロコロ変わるのはどうだろうか。

全国2位で悲しむのが理解できない

全国2位で悲しむといった描写も全然理解できなかった。どう考えても、ベスト3に入っただけでも奇跡的な結果ではないだろうか。

もっと言えば、最後こそ「できっこないをやらなくっちゃ」で踊るべきではなかったのか。ロケッツはこの歌から全て始まったはず。

誰に見てほしかったのか

ターゲットが曖昧だったという点もある。

今の若者には、この青くささが現実味がなさすぎて受けないのはわかる。

しかし、30、40代には受ける要素は大いにあった。

主題歌がサンボマスターであるのは、本家のJETSの流れもあるが、ザ・ブルーハーツの「人にやさしく」を出すあたりを考えても、40代前後の世代も狙っていたようにも思われる。

であれば、セクシーさや色気を足せていればおじさん層をもっと取り込めたと思うが、そこは最初から消していたし、そもそも途中から急にセクシーさを足すとなると、各女優の事務所から反対される可能性が高いので、それはできない。

結局、正攻法での戦い方しかてぎず、おじさん層も取り込めなかった。

また、視聴率が悪かったため、何か手を打つ必要性に駆られ、さらに変な方向に舵を切ってしまった。

すると、一部のチアダン関係者しか取り込めないため、全国的に数字を取ることが難しくなった。

プロデューサーの問題

このドラマのプロデューサーは、TBSテレビのドラマディレクターの韓哲氏。

視聴率が振るわなかったのは残念だが、前半の素晴らしさ考えればプロデューサーの手腕は評価すべきだ。

出演者が本当に練習し、見事なダンスを披露するまでに至らせた功績も大きいし、映画を元としたプロットも見事だった。

しかし、途中からの路線変更は、少し辛抱強さがなかったといえる。

個人的には最初の路線で間違ってはいなかったと思うから、それももう少し辛抱してほしかったが…おそらく上の人間から「なんとかしろ」と、どやされていたのかもしれない…

今季で一番期待していたドラマだっただけに、後半は本当に残念であった。

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