ラース・フォン・トリアー監督、ビョーク主演の、2000年製作のデンマーク映画。
(以下ネタバレを含みます)
あらすじ
遺伝性の病気で、少しずつ視力を失いつつあるセルマ(ビョーク)は、ひとり息子のジーンも、いつかは自分と同じような病気にかかって目が見えなくなってしまうんじゃないかと思い、誰にも内緒で、息子の手術費用をアメリカの片田舎の金属加工工場で日夜せっせと働いて、こつこつ貯めている。
しかしセルマの視力の悪化により、仕事上のミスが重なり、ついに工場をクビになってしまう。
さらに、ジーンの手術費用として貯めていたお金を、親切にしてくれていたはずの警察官ビルに盗まれてしまう。
セルマはビルにお金を返してもらうよう迫り、もみ合っているうちに拳銃が暴発し、ビルを殺してしまう。
セルマは殺人犯として逮捕され、裁判にかけられるのであった。
感想(ネタバレ)
ミュージカル映画ではない
この映画は、ミュージカル映画とされているけど、一般的にイメージするミュージカル映画のそれとは違う。
ミュージカルって聞くと、どこかハッピーで明るさげなイメージがあるけど、この映画にはそんな能天気な明るさなんて微塵もない。
でもセルマは貧しいながらも、アマチュア劇団に通って、大好きなミュージカルの主役に抜擢されてたり、ご近所さんや、何人かの友人達にも恵まれてて、それなりに幸せで充実した日々を送ってたわけだけど、しかし、まあ、恐ろしいほど残酷な現実が次々とセルマに襲いかか。
裏切り、憎しみ、死、そして持病の視力減退…。
そんな中で、苦しみの極地に達した時、セルマは現実逃避する。
それが、ミュージカル。
つまり、ミュージカルのシーンは、セルマの頭の中という。
この設定がとても良かった。
ミュージカルの見せ方
設定だけでなく、撮り方、というところでもミュージカルの見せ方はうまくて、普通のシーンは家庭用ハンディカメラみたいなので撮ってる風にドキュメンタリータッチで見せて、ミュージカルシーンになると、ちゃんとした固定カメラで見せることで、ミュージカルのシーンがより際立つ。
そういう手法もしたたかだし、さらに勝手な解釈を進めれば、現実の世界はセルマの眼のように、ボンヤリ歪んでて、それこそダークなんだけど、空想のミュージカルの世界の方は、現実の世界よりもハッキリとしてて、美しい。
ラストシーン
あのラストシーンは、わかっていても、衝撃を受ける。
一瞬ゾッとするよ。
この映画、観て泣いた人が多いみたいだけど、それは感動したとか悲しくなったからじゃなくて、単純にあのラストシーン観て怖くなって泣いてたんじゃないか。
最後まで救いようがない、悲しい映画。
もし20代の椎名林檎が主演で映画をやっていたら、こんなようなものになるんじゃないかと思う。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」評価
★★★★★★★☆☆☆