映画「日日是好日」感想 映画界という現世を去った樹木希林最後の言葉

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エッセイスト・森下典子による自伝エッセイ『日日是好日-「お茶」が教えてくれた15のしあわせ-』を原作とした、2018年10月13日公開の日本の映画作品。

動かないロードムービー

緩やかに流れる、一人の女性の、お茶を基点としたロードムービーのようだ。とはいっても場所はあの茶室だけなんだけど。

ミニマムな映画で、映画館で見るようは映画じゃないかもしれないけど、こういう映画こそ映画館で観るのが、贅沢といえるかもしれない。

黒木華と多部未華子という素朴なキャスティングもいい。

こんな映画があるという美しさ

間違っても、成長した二人がお茶コンテストで優勝、先生にっこりみたいな映画でなくてよかったと思う。

また、先生が茶道を通して人生を教えるみたいなあざとさもなく。ただ淡々と進むのがとてもいい。

この淡々さが、もし自分に娘ができたら茶道を学ばせたいと思った。それこそが、この映画の持つ、一番の純粋な力といえるだろう。

きっと、こういう映画はヒットしないと思う。ただ、こういう作品が作られる国であるということが、日本のエンターテイメント捨てたもんじゃないという感じがするし、おそらくそこまでギャラも良くないのではと思える本作に出てくる樹木希林さんがいてくれて良かった。

 

本作の主人公は、器用でもなく美人でもなく、どこにでもいる平凡な女。でも、世の中はそんな女性が八割を占める。

そんな多くの女性の応援ソング、いや、応援映画ではないだろうか。とても地味だけど。

ナレーションだけで厳しい現実を淡々と描写するところもいい。人生の核となるようなタイミングは全て淡々とナレーションだけで解説し、その心模様を茶道に表す。そこがとても良かった。この監督の作品はもっとたくさん見たい。

正当な評価はできない

ただ、この映画を正当な評価をできる人はいない。なぜならこの作品が、樹木希林さんの遺作となったからだ。

厳密には、『命みじかし、恋せよ乙女』『エリカ38』あたりが遺作となるんだけど、亡くなられたタイミング的にも、この作品が樹木希林の最後だという印象で鑑賞した人は多いと思う。

そのため、樹木希林さんに思いを馳せながら本作を鑑賞した人が多いと思うので、なんというか、希林さんを観れるだけでもありがたさを感じてしまうのだ。

樹木希林という女優

樹木希林さんのお茶の所作は、単なるお茶の先生ではなく、日本人になにか、映画を通してなにかを教えてくれてるのような気さえしてくるから、視聴者とは都合がいいものだ。

樹木希林さんのドキュメンタリーも一通り見たけど、この人の根底はどういう人なんだろう。実はこんなお茶の所作なんかどうでもいいと思っているのではないか。なにしろ、生涯で愛したただ一人の男が「ロッケンロール!」なのだから。

「私のような至らないものに、長い間ついてきてくださいましてありがとうございました」

というラストの樹木希林さんの言葉は、まるで映画界(現世)を去る前の最後の樹木希林さんの言葉にも聞こえる。

あまりにも、あまりにも寂しい。あなたが出ている作品を、これからも何度も観たいと思います。

きっと樹木希林さんという人は、ご冥福なんかお祈りされたくはないだろう。

それでもやっぱり日本にあなたという人物が、エンターテイメントの世界に関わってくれたことに感謝してもしつくせない。

本当に、ありがとうございます。

「日日是好日」評価

★★★★★★★☆☆☆