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映画「万引き家族」はここがすごい!是枝監督脚本の最高傑作(ネタバレあり)

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2018年6月8日公開の日本映画。監督・脚本・編集、是枝裕和監督。

パルムドール歴代日本人受賞作

こういう作品がパルムドール獲っちゃうから、カンヌ映画祭とブランド力が保持されているんだと思う。

ちなみに過去の日本人パルムドール受賞作は以下。

  • 1997年 今村昌平『うなぎ』
  • 1983年 今村昌平『楢山節考』
  • 1980年 黒澤明『影武者』
  • 1954年 衣笠貞之助『地獄門』

『万引き家族』は日本アカデミー賞も総ナメにした。

万引き家族ロケ地

古民家は東京都足立区

あの古民家は、東京都足立区梅田7丁目の古民家を使用しているらしい。

スタジオセットも作ったようだけど、その古民家のように作り、両方使い分けながら撮影していたのだと思われる。

スーパーは埼玉県草加市

また、スーパーのシーンは埼玉県草加市の新鮮市場八幡店。

海は千葉県いすみ市

海水浴のシーンは千葉県いすみ市の大原海水浴場。

ちなみに、このシーンは脚本が出来ていない段階で撮影に臨み、この撮影現場の雰囲気を通して、どのように家族にしていくかを脚本に落としていったという。

万引き家族はここがすごい

圧倒的な構図

今もっとも天才モードに入っている是枝監督なので、構図がどのシーンもめちゃくちゃいい。

どこを切り取って静止画にしてもポスターにできるであろう見事な構図と、それを助長する色味と明るさ。

役者の動かし方

この絶妙な関係性の家族愛は、リリーフランキーさんと安藤サクラさんによる美しき不協和音で構成されている。

この2人の描写力に加え、樹木希林さんが加わるとなれば、この家族はなんともいびつで温かい家族愛を醸し出す。

是枝作品でいつも思うのは、役者に対しどんな演技指導をしたら、このような自然な演技が引き出せるのか

まるで役者を魔法にかけたような、あるいは、起こっていることを勝手に盗み撮りしてるかのような自然さがある。

だからこそ、あざとい相関図的説明がなくとも、なんとなく演者らの関係性が見えてくるところも見事だと感じた。

淡々としてるのに飽きないリズム

海しろ山にしろ、動物でも植物でも宇宙でも、自然のものはただ撮っただけでも十分見ていられるものになるように、ドキュメンタリーもただ見ていられる。

そこに人間の機微が垣間見れるようなカット割りをするだけでいい。

是枝作品は、自身がドキュメンタリー畑出身ということもあってか、とにかく自然に起きている現象を捉えるといった撮り方をする。

だからこそ、明瞭な起承転結を用いない。

そもそも日常生活においてドラマチックな起承転結なんてそう起きない。それなのに、見ていられるのは、ドキュメンタリーを見ているようなリアルな日常が描かれているからだ。

どこか、『ザ・ノンフィクション』のような。顔にモザイクかけて、ナレーション入れたら、ノンフィクションみたいになりそうだもの。

ちなみに今作でも、『海街ダイアリー』の広瀬すず同様、子役には脚本を渡さず現場で演技指導していったそう。

ゆいが歯が抜けるシーンも、実際に本番中に突然歯が抜けたため、そのハプニングを本編でも生かしている。

複雑な家族愛

ただこの作品は、これまでの作品と比べると、幾分かストーリーがある方だった。

特異な家族愛の物語と、いびつがゆえに一度壊れた歯車が一気に空転していく様。

樹木希林さん演じる、おばあちゃんの死からそれは始まる。

そして終盤、わずかに人として当然の母性や父性が芽生えたあたりで、物語は幕を閉じる。

最後、女の子のアップで終えたことで、家族愛とはなにかまで考えさせるスケール感を持たせたところが大きいと思う。あの子は本当に幸せになるのだろうか。

これまでの是枝作品だったら、海のシーンでそのまま普通に終わりそうなものだ。 

樹木希林さん

是枝監督が樹木希林さんの起用に関してお話されていたことがとても印象的だった。

「樹木希林さんは、甘い考えだと見透かされるので…堂々と希林さんの前に立てる監督でありたいと思う。そう思わせる役者さんというのは本当に少ないです」.

豪華な脇役

この作品は、柄本明さんや、緒形直人さん、池松壮亮、池脇千鶴に高良健吾と、脇役が随分と豪華だ。

特に池松壮亮は本当にちょっとだけだったけど、でもものすごいインパクトを残しているあたりがさすがだと感じた。

是枝監督脚本について

是枝監督はやはり映画監督であり、脚本家ではないと思う。

『3度目の殺人』も随分評価されたけど、

sagitani-eiga.hatenablog.com

個人的にはそんなにおもしろいとは思えなかった。

本作も、是枝脚本なのでどうだろうとは思っていたけど、これはとても楽しめた。是枝監督脚本の中では間違いなく最高傑作だ。

でもやっぱり、是枝監督は、原作があるものを映像化するほうが、その才能が最大限発揮されるように思う。

究極が『海街ダイアリー』だった。

なので是枝監督と海街ダイアリーの出会いが奇跡だったと言えるかもしれない。

「万引き家族」評価

★★★★★★★★☆☆