原作は、澤村伊智による日本のホラー小説『ぼぎわんが、来る』。
映画版は2018年12月7日に公開。監督は中島哲也。主演は岡田准一。
ピカソ的才能 中島哲也監督
前半の妻夫木聡によるイクメンパパの物語だけでも、十分見ていられる。もうホラー要素いらないから、それだけで観ていたくなってしまうほど。
この、妻夫木聡と黒木華の夫婦っぷりがなんともリアルでとにかくおもしろい。どのような演技指導をしたら、ここまで演者をナチュラルに動かせるんだろうと思う。
本作における妻夫木聡の演技っぷりは、アカデミー最優秀主演男優賞ものだ。
中島哲也監督は、独特の手法を駆使するという印象があるものの、普通に撮らせても無茶苦茶うまいんだと痛感する。まるでピカソのよう。
映画のルールなどお構いまし
中島哲也監督作品を観ていて感じるのは、映画の理論的なものをお構いなしに、徹底した自分主義を貫くような撮りかただ。それが本作では『告白』よりも数倍ブラッシュアップされていて、映像を観ているだけでもとにかく退屈しない。
色彩から、カット割りから画角からBGMから、なにもかもが斬新で、観ている人を飽きさせない。どれもこれもただ奇特というわけではなく、本作の映像作品としてきっちりと成立しているからすごい。
松たか子の唯一無二感
前半は妻夫木聡と黒木華のいかにも昨今よくいそうな夫婦劇で、後半は岡田准一が中心になる。
そこでポイントになるのが松たか子。中島組の若頭。
松たか子さんといえば、『ラブジェネレーション』で木村拓哉さんの相手役で世に認知され、妙な歌でもヒットして、ルックス先行型の女優ではないものの、『告白』あたりから唯一無二感を醸し出してきた。
この映画でもこの唯一無二感かなり強く、さすが松本幸四郎の娘といったところか。血は争えない。
抽象度のバランスが完璧
後半、ルールをはっきりさせないところも良かった。
「あれ」とは何なのか、観るものに想像させる。また、それは誰しも思い当たるフシがあるなにかだ。自分も「あれ」を呼び起こすようなことをしている後ろめたさにいつからか突かれ始める。
それは「あれ」の定義を定めないからだ。
まるで街中で「おい!」と大声で呼ばれたかのよう。
自分のことを呼んだのか、他の誰かのことを呼んだのか。でも「おい!」と呼ばれたからとりあえず振り向いてしまう。
その抽象度が実にうまくて。
それもこれも、これだけ見事な映像を次々と魅せられるかだだと思う。そうでなければ、「よくわからん」「あれってなんなの」といった理屈が脳内を占めてしまうから。
観るべきホラー映画
この映画のコピーが
「こわいけど、おもしろいから、観てください」
という、なんの捻りも訴求力もない、そのまますぎるコピーなんだけど、いやはや、観ると、まさに「こわいけど、おもしろいから、観てください」と人に言いたくなる。
観終わったあとに特別なにも残らない映画だけど、間違いなく観ている120分、ずっと惹きつけられる映画であることは間違いない。
「来る」評価
★★★★★★★☆☆☆