なんというドラマ。
毎週無料で観られるのが恐れ多いクオリティで、駄目な点を探すのが難しい。
かえって、このドラマを低評価している人を探してその人のセンスを疑うという愚行に出たほうがいいかもしれない。
では一番優れてるところはどこだろうか。
やはりキャスティングではないか。
キャスト
広島市
北条すず(松本穂香)
まず主演のすず。
竹内結子のような透明感ある美貌に、能年玲奈のような純粋無垢さ。
ちなみに、アニメ版ではすず役を能年玲奈が担当している。
松本穂香は本作主演の3000人のオーディションを勝ち抜いたシンデレラガールであるが、オーディション時も、バッグを撒き散らしてしまったり、サツマイモの品種の話を延々続けるという、まさにすず役に適任と関係者らに認められたようだ。
『ひよっこ』や、auのCM「意識高すぎ高杉くん編」などで、すでに認知度はあるが、このドラマでは大抜擢となる。彼女にとっては本作が確実に女優としてターニングポイントになるだろう。
浦野キセノ(仙道敦子)
すずの両親もいい。
まず仙道敦子さん。『とんぼ』小川英二の妹が、戦前の母を演じる。
23年ぶりの連ドラ出演となるが、ブランクを感じさせない安定感ある演技。
夫である緒形直人さんとの長男、緒方敦は、昨年『陸王』で山崎賢人の同級生役で俳優デビューしているから、そこで女優魂に火がついたのかもしれない。
浦野十郎(ドロンズ石本)
ドロンズ石本さんは舞台などでも地道に俳優業を積んできているし、芸人であるから、演技力の深さがある。
この人は今後、ピエール瀧の後釜をきっちり狙えると思う。顔立ちから体型から、悪役もこなせるはず。
浦野すみ(久保田紗友)
この人は知らなかったけど、調べたら「世にも奇妙な物語2016」の『ずっとトモダチ』に出てた子なんですね。
あのLINEで、りんなに追い詰められていく子だ。
森田イト(宮本信子)
マルサの女登場。
この人クラスの上を狙うなら、樹木希林さんか、市原悦子さんかってくらい盤石。
白木リン(二階堂ふみ)
二階堂ふみの演技力はすごいが、ここは技量よりも見た目が問われる役。
ただセクシーな人ではダメだし、貧乏上がりで品がなく、でもどこか妖艶で知的な色気を醸し出せる風貌がないといけない。
その点においても二階堂ふみは贅沢なキャスティング。
水原哲(村上虹郎)
なんとも昭和顔見つけてくるなあ、と思ったら、村上淳さんとUAの息子か。
見事にこの二人の顔をMIXしたような顔立ち。役者顔ですね。
呉市
北条周作(松坂桃李)
ここの役どころはそんなに難しいところではないし、今の松坂桃李にできない役はないと言えるくらい乗ってる俳優なので磐石だ。
それに、この顔立ちは坊主にすると一気に昭和顔になるイケメンなので、俳優がうらやむ顔立ちであり、V6の岡田准一ではこの味は出せない。
北条円太郎(田口トモロヲ)
この、頼りになるんだかならないんだかわからない微妙な両親もすごくいい。
悪い人ではないんだけど、必要以上にすずに優しいわけでもない。
そんなどっちとも取れるような微妙な役どころが、田口トモロヲさんが見事に合う。
きたろうさんとかでもあり得たかな。
北条サン(伊藤蘭)
『相棒』のリアル相棒。まさかここに出てくるとは。
この役どころは、もうちょっと夫にしっかりしてほしいという思いや、奔放な長女への徒労感、すずに対する期待と不安と、すごく難しいところなんだけど、完璧。
伊藤蘭さんもまた、厳しそうにも、優しそうにも見えて、この難しい役どころにぴったり。
黒村径子(尾野真千子)
特筆すべきは松坂桃李の姉と幼馴染。
まず姉には、天才女優、尾野真千子。
この人もまた昭和顔美人なので、この時代設定の映画やドラマによくはまる。
松坂桃李との姉弟感がものすごくしっくり来る。
この姉役は難しい役どころだけど、この人もまたどんな役でもこなす技量があるし、今の年齢的にも、ちょっと嫌味な義姉役がはまりすぎる。
刈谷幸子(伊藤沙莉)
そして幼馴染。この人のポテンシャルこそこのドラマナンバーワン。振り切り方が半端じゃない。めちゃくちゃうまい。
いくつかの出演経験はあるものの、彼女もまた、本作が出世作となるだろう。
衣装やメイクによってはかわいくもなれるし、これまた役者顔。
佐藤仁美さんみたいになっていくのかな。いやもっとポテンシャルありそう。
堂本安次郎(塩見三省)
そして塩見三省さんが帰ってきた。
アウトレイジ最終章では、いささか後遺症がまだ残っている様相だったけど、本作ではどうだろう。でも表情はだいぶ生気を取り戻しているように見える。
大事なキーマンになりそう。
天才すぎる子役たち
すず役の子、新井美羽ちゃんは大河ドラマ『おんな城主 直虎』や、朝ドラ『わろてんか』でも本作同様、主人公の子供時代をやってきているだけあって、本当にうまい。
そしてものすごく松本穂香感があって、リアルだ。
この子の2つ上になるけど、鈴木梨央か、この子か、というほど。
妹役も、兄役も、水原役もすごくいい。
このドラマは、子役の使い方が異常にうまい。
誰をどの役にあてがい、どのようなセリフでどのような表情でどのように撮るか。
知名度で選ばないキャスティング
とにかく、数字を持ってる役者を揃えようとばかりするドラマに中指を立てるかのように、作品ファーストでキャスティングをおこなってきていることが分かるし、それは見事に成功していると思う。
これだけの大作ならもっとオールスターズにもできそうだけど、地名度の高さは度外視し、あくまで作品を念頭に置いたキャスティングが素晴らしいと思った。