鷺谷政明の神映画レビュー

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映画「We Love Television?」感想 エンタメ界必見の欽ちゃんラストランが始まる瞬間

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番組を制作する姿を追いかけながら、エンターテインメントに対するすさまじい執念を浮き彫りにするため、2011年から密着取材を行ったドキュメンタリー映画。

監督を務めるのは「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」や「電波少年」シリーズ、「ウッチャンナンチャンのウリナリ!!」などのヒット番組に携わってきた土屋敏男。

エンタメ界必見の映画

この映画を、一つの作品として評価しようなんていうのはもったいない。

萩本欽一という笑いの天才が、どのようにお笑いを構築していくかという過程が見れる貴重な資料映像なのだから。

本作に表れている萩本欽一の笑いの方程式はとても興味深い。

ある程度作って作って作りこんで、それを全部壊して開始する。結局はその場で起きる反射神経こそ究極の笑いであるという欽ちゃんの姿勢は、さすが元祖素人いじりの達人たる所以だ。

関西代表・河本準一の躍進

その天才と丁々発止の展開を見せた河本準一の活躍がすごい。

確かに欽ちゃんの過去の実績はすごいが、現代テレビ界の経験では河本準一さんの方がじはるかに経験値は高い。

また、この人は吉本興業でありながら、とんねるずとも見事な化学反応を起こせる希少な人物。ダウンタウンととんねるずを渡り歩いてきた人間の柔軟性と反射神経は、伊達ではない。

本作を見た人間なら、「河本あっぱれ」と誰もが認めるはず。

ちなみに、ダウンタウン、とんねるず、ウッチャンナンチャンまで渡り歩いた男が、勝俣州和。奇しくも、欽ちゃんファミリー。

今のお笑いへの対応力

本作で一つ特筆すべきは、欽ちゃんのブチ切れドッキリ。

昨今よくある手法だが、この欽ちゃんがめちゃくちゃうまい。やっぱり達者な人なんだと痛感する。

この手の役割で上手いとよく言われるのが、浜田雅功さんや和田アキ子さんだが、欽ちゃんのキレた演技はこの誰よりも怖い。

現場のタレントやスタッフらも騒然とする。

後付け映画ではあるけど

これは、元々こういう映画を作ろうと思ったわけではなく、全ては『新欽グShow~欽ちゃん!30%番組をもう一度作りましょう(仮)~』という金曜スーパープライムの番組の布石。

これは2011年7月22日(金)19:00 ~ 20:54に放送されたもので、視聴率は8%台に終わった。

まず、いきなり放送して30%取るなんていうことはありえない。

32年間続けた『いいとも!』の最終回で、さんま、とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、ナインティナイン、爆笑問題が一同に介して取れるのがようやく28%のわけで。

最初から無理だというのことはわかっていたとは思うけど、「欽ちゃんが久しぶりに地上波ゴールデンやりまーす」というよりは、少しそこにストーリーをつけたほうが盛り上がるという狙いだったんだと思う。

田中美佐子さんの病気による降板や、欽ちゃん自身も倒れるなど、様々なアクシデントに見舞われたが、それから6年の歳月を経て、こういった形で映画化された。

観やすい構成、映像

最初から「映画にしよう!」という構想があったわけではないのに関わらず、映像は結構観やすい。手ブレもひどすぎず、音声も聞き取りやすく、スマホで撮っただけであろうシーンも入っているが、そんなに違和感がない。

そのうえ、構成や順序もあざとすぎず作られており、そのあたりはさすが『電波少年』というお笑いドキュメンタリーを作ってきた名テレビマンといったところ。

NHKBSから反撃開始

その後も萩本欽一さんは、NHK BSプレミアムで『欽ちゃんのアドリブで笑』という番組を2017年から不定期でおこなっており、2019年8月19日放送では、香取慎吾の出演も決定している。

地上波放送ではないものの、地上波奪還を目指す欽ちゃんと香取慎吾がタッグを組むというストーリーが図らずも生まれた。これは奇跡再来の予感。

まずはBSから地上波に返り咲いて欲しい。

個人的には、萩本欽一さんはタモリさんと絡むと無茶苦茶おもしろい。

もはや芸能界のトップに君臨するタモリさんを唯一困らせる無茶ブリができるのは、萩本欽一さんと黒柳徹子さんしかいないから。

その無茶ブリに対応するタモリさんがすごい。本人は気を使うし疲れるから嫌がるだろうけど。

去るか変えるか戦うか

芸人とはどうあるべきか。

ダウンタウンは変えた。お笑い一筋ある職人気質でありながら、飲み歩きや街ブラをおこなう、いわゆるタレントとなった。松本人志さんに至ってはコメンテーターまで。

最後まで戦ったまま去ったのがとんねるずだ。最後までふざけてふざけて散った。そして、石橋貴明さんが、非常にタレントらしい「石橋貴明のたいむとんねる」という番組で芸人という枠から少し距離を置いた。

未だ笑いの世界で戦い続けているのが、志村けんさんと萩本欽一さん明石家さんまさんである。

ただやはり、この3者で並べると、明石家さんまさんのほうが器用には見える。

お笑いの定義は時代と共に変遷していくが、いわゆる「ネタ」や「コント」の世界で戦い続けているのが、志村けんさんと萩本欽一さんだけかもしれない。

笑いに身を賭した、昭和の天才萩本欽一さんのラストランが始まる。

「We Love Television?」評価

★★★★★★★☆☆☆