鷺谷政明の神映画レビュー

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映画「チョコレート」感想 この映画で感動するのも違うような

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マーク・フォースター監督、ハル・ベリー主演の2001年のアメリカ映画。

感動する映画ではない

面白かった、楽しかった、感動した、共感した、どれも違いますね。

一つ言えるのは、この映画を観て涙を流せる人というのは、多分この映画の表面的な部分を見てるだけなんだと思います。

感動するような映画ではない。

監督のセンスがブレない

個人的には、全体的な雰囲気、カメラワークや演出に惚れました。もうそういった映像面で言えば、ほとんど完璧。キャスティングや音楽もかなりいい。

ラブシーンの撮り方まで本当にうまい。

この監督は、何かこう、自分のやり方というか主義というかセンスというものとかが、
こうしっかり一本筋が通っている感じがしますね。

それから、この主人公の二人も素晴らしかった。ハルベリーが主演女優賞獲ったのもわかる。

ラストだけちょっと

ストーリーで残念だったのは、ラストです。

チョコレートを買いにいくと言った瞬間にまさか、と思った。

あの筋書きは、ちょっと前にやったばっかりの構成ですよね。

つまり、自分がいない間に、ハルベリーが勝手に行動し、何かを見つけ、感情が起伏するという。父親と会って、のくだりがあった後に、またハルベリーが家で一人になったから、まさかまたと思ったけど、やっぱり「何か」を見つけ、感情が乱れる。その手法は使ったばっかりなのに。

あそこでハルベリーがグッと感情をこらえ、主人公と生きていこうと決心するあのラストシーンの表情は半端じゃないです。

あのラストシーンこそ、彼女の実力をしらしめた一瞬の演技ではないでしょうか。

それは確かなんだけど、その前にあそこで激怒して怒ってまた家を飛び出していくことはできないだろうと思うんですよね。だって自分が住んでた家はあんな強制的な形で
立ち退けさせられて。そこに地獄に仏ばりに主人公が現れ、その時だってそういう状況
だったから、もう一度心を許した部分があるわけだし。

さらに突っ込む

そうすると何か。

要約すればあの父親は必要だったんでしょうか。

あんなちっちゃなきっかけでの二人の心の離別の描写は必要だったのか。それなら、最後まで平穏のままで、一番最後の最後でいろんな事実に気づき、それをぐっと飲み込むハルベリーとすれば、もっと深みが出たんではないか。

あの父親の設定が必要だったなら、もう過去に死んでしまったということにして、回想シーンとして登場させればよかったんではないか。

いや、どうしてもそれでも必要なんだと言うなら、あの父親とハルベリーが会うシーンは、もうちょっと手前、つまり早い段階でやってワンクッション置いておくべきだったのでは。

この映画はなにか

しかしこの映画はラブストーリーなんですかね。そりゃ二人の男女が心を通わしていくという部分で見ればラブストーリーですが。

うーん、何か、ラブストーリーとして捉えるのは違うような気がする。

冒頭でも言ったように、感動するとか、そういうもんじゃないと思うんですね。

男と女の愛の物語、というよりは、人間と人間の愛の物語、というか。だからこれ、脚本も、すごく不思議で、それでもまとまっているのは、監督の映像面での手腕だと思います。

デブの息子は、あっさりと死んでしまうし、主人公はハルベリーに旦那はどうしたんだ?とは聞かない。息子が死んだなら、夫はなぜこないんだ?と普通は思う。

ハルベリーだって、主人公の職業とか、何をやっている人なのかは知ろうとするはずで。

本来であれば、一番最初に知るべき部分を一番最後に違和感なく持ってこれたのも、この監督のなせる業だと思いますね。

「チョコレート」評価

★★★★★★★★☆☆