2014年公開の中島哲也監督作品。R15。
原作は、深町秋生による推理小説『果てしなき渇き』。
若者描写の天才
若者文化を描写させたら中島監督の右に出るものはいない。
若者らの刹那的な危うさやノリだけのバカらしさ、それでいて見た目の若さによる美しさ。
さすがにわかりにくい
本編は独特の表現を追求しすぎていて、少しわかりにくい。
画が寄りばかりで全体が見えず、状況が判断しにくいうえ、音声も怒鳴ってばっかで聞き取りにくい。
説明過多で気持ち悪い映画が多い中で勇気ある作品だとは思うけど、ヴィンセントギャロでも北野武さんでも、もう少し説明描写は入れる。つまりフリ。
感覚的に表現されすぎててストーリーが入ってこないからもう一つ楽しめないのがただただ惜しい。
二回三回と見れば楽しいとは思うけど、この細かいカット割りと違和感狙いのBGMでは少々わかりにくい。
よくわからないままラストに入ってちょっと叙情的になるから、何を今更真面目ぶってるんだ、まるで中島作品に出てくる典型的な若者らのようにヘラヘラしてしまった。
途中途中、時間の表示が出るけど、あれも全くついてない。
芸術的すぎる編集
とてもいいストーリーだし、演者の動かし方から配役まで完璧なのに、根幹のストーリーが見えにくい。
『告白』や『来る』は、きちんとわかりやすかったのに、この映画は少し中島節が強すぎて、物語が少し掴めにくいのが残念だった。
編集が恐ろしいほど細かく、撮影も何パターンにも渡って撮影されててもはや変態的。まともな監督ができることではない。
そして暴力描写が北野武監督なみにうまい。北野作品のような、痛みが伝わる描写じゃないけど、リアリティある暴力描写。
ミュージシャンにしたら、誰もがPVを撮ってほしいと思うのではないか。徹頭徹尾かっこいいから。
役者に新たな価値を見出す人
この映画を観て、『狼浪の血』の役所広司さんは生まれたんだなと思った。
役所広司という俳優の凄さはリミットがないところにある。どんな演技でも全て受け入れ自分のものにしてしまう。
そして中島監督こそ妻夫木聡に新しい価値を見出した人だと思う。それは『来る』で完璧に昇華される。『告白』における松たか子もそう。
新作が出たら、とりあえず観ておこうと思わせる監督の一人であることには違いない。映像や役者の概念をどんどん変える人だから。
「渇き。」評価
★★★★☆☆☆☆☆☆