映画『チアダン』のヒットを受け制作されたドラマ『チアダン』第一話。
ドラマ版の『チアダン』は映画版とリンクした内容になっており、JETSに所属していた姉を持つダメな妹(土屋太鳳)を中心とした話で構成されている。
てっきり、映画版の焼き直しをやると思っていたところでまさかの不意打ち。
このプロットを作った時点で、もうこのドラマの勝ちだと断言できる。
必ず、このドラマは今季No.1の視聴率を取ると今ここで予測しておく。
圧倒的青臭さ
「土屋太鳳、チアダン」という時点で、なかなかの青臭さだろうなとは覚悟していたが、想像を絶する青臭さで痛快であった。
テレビ東京のドラマ『宮本から君へ』然り、青臭いもの、ストレートなものが再びドラマ界の主導権を握る時代が来たのかもしれない。
同じ学園ものでいえば、「今」っぽいドラマだった『僕たちがやりました』が大ゴケしたことを考えると、時代の雰囲気を抑えた実在しない「今」っぽさよりも、ドラマツルギーを真っ向から肯定していくこのスタイルこそが正解なのかもしれない。
ドラマ「チアダン」5つのすごいポイント
1. ダメな妹、できる姉(元JETS)というプロット
できる姉、ダメな妹、というプロットはよくあるが、このドラマでこの設定を用いたことが秀逸で、つまり、できる姉が元JETSというところが見事なのだ。
実話であるJETSの事実を映画のように描くことはやめ、そのJETSを軸にした創作を持ってきたところが見事としか言いようがない。
2. 時代を無視した圧倒的青臭さ
これは先述したポイントになるが、青臭さが振り切っていてとにかく見ていて気持ちがいい。
顕著なのは第一話のラストシーンだ。
駅前で踊り出す女子校生というだけで相当な時代錯誤なのに、そこまでに登場した主要人物が全員、偶然そこに居合わせているという絶対にありえないことを平気でやってのけてしまう痛快さ。
これは完全に、「これで行きます」というこのドラマの宣戦布告であり、「青臭いと罵るならどうぞ罵れ」と言わんばかりで実に痛快である。
東京へ行く姉のために踊る。そう、チアダンスは頑張る人を応援するものであり、原理原則は間違っていない。
演出がありえないのだ。しかし、ドラマだからこそOKなのであり、「チアダン」だからOKなのだ。
3. 広瀬すずの登場
視聴者の度肝を抜いたのが広瀬すずの登場だろう。
広瀬すずは、業界的には完全に土屋太鳳の類似タレントであり、この2人の共演というだけで業界人はハラハラしてしまう。
そしてこのドラマでは、広瀬すずは主要登場人物の誰よりも年上役として出ているが、このドラマの出演者とほぼ同い年、または下である。
少なくとも広瀬すずは土屋太鳳の3つ上であり、土屋太鳳の姉役の新木優子は広瀬すずの4つ上。
なので実年齢を考えれば相当無理があるが、それでも映画ファンからすればそんなことは関係ないのだ。なにより広瀬すずの登場に価値がある。
また、駅前のラストシーンで垣間見せたあの達観した表情は、さすが是枝裕和監督が惚れ込んだ女優だけのことはある。
4. うつ病の教師オダギリジョー
教師役がオダギリジョーという話を聞いたとき、このドラマへの期待値は下がった。
なぜなら、「天海祐希の役をオダギリジョー?」と思ったからだ。
しかし、青臭さ全力のこのドラマに、あえて元うつ病の教師という設定を用い、その配役にオダギリジョーを充てがった。
これも見事としか言いようがない。
5. 校長役の阿川佐和子
この手のドラマの校長役はキーマンになる。
例えば竹中直人さんのような人を持ってきて、変人さながらの校長をやらせるという手もあって、つまり、理屈はなくても、この人がいいというならいいんだろうと思わせる人でないとダメであるが、そこに、同局のドラマ「陸王」で見事な演技力を見せた阿川佐和子を持ってきたところが見事であり、その対比として、嫌味役をやらせたら日本No.1、木下ほうかを持ってきたところも抜け目ない。
6. スカート下のジャージ
余計なエロさを排除するために、スカートの下にジャージを履かせてるところもいい。
夏場であれはちょっと無理があるけど、今更そんなディティール一つとってつつくのは野暮というもの。
リアリティーを追求しすぎてつまらなくなるくらいなら、あり得なくてもおもしろいものがいいのはいつの世も同じだ。
気になる3つのポイント
ポカリ女子が踊らんかい
このドラマを見ていて思うのは、八木莉可子の存在感。
絵かき女子として登場しているが、「八木莉可子、お前が踊らんかい」とは誰もが思ったはずだ。
なぜならこの子はポカリのCMで、大勢の女子高生を引き連れて踊っているではないか。
だからこそ思う。
お前が踊らんかい、と。
二代目真木よう子?山本舞香
二代目真木よう子感半端ない、あの不登校のダンサー、山本舞香というのはいったい誰なんだ。
2011年から芸能界で仕事してるようだが、ここまで当たり役はない。
大きな作品だと『暗殺教室』か。
wikiによると
小学校1年生の時から空手を習っており、小学校6年生の時に県大会で優勝。2012年2月時点で、帯は黒帯。
座右の銘は「己を信じよ」。
目標とする女優は、長澤まさみ。
とある。
無名塾で仲代達矢と揉めたといった経歴はなかった。
幼馴染との恋
もちろん、この恋の行方が気になるという意味ではなく、今後どれくらいここが出てくるのかということ。
つまり、このドラマに恋愛要素が入ってくると、この作品が保っているいろいろなあり得なさのバランスが一気に崩壊することになる。
もしこのドラマが失敗するとしたら、この恋愛路線を強めたときだろう。
一話目であれだけ彼が出たということは今後必ずこの要素は出てくるはずだ。
このドラマの命運を握ってるのはここであり、いかにこの恋愛要素を制御できるかがポイントだ。
個人的には一話目にも全く出さなくても良かったと思っているくらい。途中からちょっとずつ入ってくる程度でいい。
サンボマスター「できっこないをやらなくちゃ」は2010年の曲
このドラマの主題歌であるサンボマスター「できっこないをやらなくちゃ」は、このドラマのために作られた新曲だと思っている人が多いが、この曲は2010年にリリースされたもの。
この曲は、福井県立福井商業高等学校のチアリーダー部JETS(本物のほう)が創部当初から踊り続けていたという背景があるのだ。
そう、この歌は実在のJETSのリアル・テーマソングなのだ。
それを理由に今年の1月に放送されたTBSの特番「さんま・玉緒のお年玉!あんたの夢をかなえたろかSP」では、JETSの指導者である五十嵐裕子氏の50歳のバースデーサプライズとして、サンボマスターが生演奏する「できっこないを やらなくちゃ」をバックに現役の部員とOGがチアダンスをする姿が紹介された。
かっこ悪くても情けなくても、どんなに恥ずかしいことでも全力でやってのけるぜというテイストの歌をやらせたら、サンボマスターの右にでるものは日本にはいない。
だからこそこのドラマの適任であるといえるし、当時、「絶対に無理だ」とみんなから笑われ続けていた五十嵐先生にとって、なによりこの歌が響いたのであろう。
第一話の視聴率は8.5%
『チアダン』第一話の視聴率は8.5%。
他とドラマと比べるとやや低めだが、必ず今季No.1を獲ると思う。
二話以降必ず上がっていくと思われる。