イギリスの児童文学作家J・K・ローリングが1997年に発表した、子供向けファンタジー小説『ハリー・ポッターシリーズ』の第1巻が原作。
(以下ネタバレを含みます)
感想
『魔女の宅急便』の巧みさ
魔法使いのわりには、電車や船に乗ったり、手首があっさり折れてしまったり、そんなの魔法で何とかしてみろよ、とか、そういうくだらないつっこみはしません。
ただ、『千と千尋の神隠し』もそうだったけど、人間と魔法使いの関係がいまいちピンとこない。
「9と4/3番線ってどこなんですか?」ってポッターが駅員に聞いた時、駅員は「何言ってんだこいつ」みたいな感じになるけど、あそこは、「ああ、魔法使いさんはこっちだよ」と言わせておけば、観てる側としては何となく人間と魔法使いの相互関係がつかめる。
『魔女の宅急便』における、人間の魔女に対する認識を説明する描写のような。
『魔女の宅急便』はそこがさりげなくできてて、すごくよかった。
人間界では魔法を使うことは禁止されてるとしたって、人間界の住人は、魔法使いのことを全く知らないことはないわけでしよ。
最初、ポッターがあのでかいおっさんと、杖やら何やら買いに行くけど、あそこはいったいどこなんだって思った。
あれは人間の世界?魔法使いの世界?それとも入り混じってる?
9と4/3のホームみたいに、変な入り方をしたから、きっと、魔法使いの世界なのかもしれないけど、ちょっと説明描写が巧みとは言えない。
もちろん、人間界のことなんて後々そんな問題になってこないからいいんだけども。
子どもに創造力を与える映画
ストーリーも、映像的にも、おもしろかったと思います。
子ども向け映画と言ってしまえばそれまでだけど、子ども向けだからなにかが劣っているということもないわけで。
子どもに創造力を与えるいい映画だと思う。
小さい頃は、ドラクエの世界に入ってみたいと思っていたし。
理屈抜きに見る
『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』が難しいとかって言う人がいるけど、ああいう映画っていうのは本来理屈で観るものではない。
大人になって理屈で見て理解しようとする癖がついてしまうと、受け入れられない部分が出てきてしまう。
でも子どもは、理屈ってこと自体がよくわかってない状態で、ダイレクトに観るから、伝わりやすい。
もちろん、理屈が備わってないから、感想は「好き」「面白い」「楽しい」しか出てこないけど。
例えば『千と千尋の神隠し』がよくわからないと言っている大人は、子どもの頃観た宮崎アニメは楽しかったと言うはず。
大人になって初めて『ラユピタ』や『ナウシカ』を観たらピンときてなかったかもしれない。
子ども向けだからこそ
ただ、子ども向けだからこそ、ハリーのえこひいき的描写は、ちょっと和らげる必要があったような気もする。
少なくとも俺には、あのライバルの奴が最後ちょっと可愛そうになった。
もう少しあのライバルの奴の印象を悪くしておくか、または、ハリーはすごく不幸な子、という印象をしっかり与えておく必要はあったと思う。
または、ハリーは別格、特別なんだから、という印象をもっと強めるか。
特にそう思ったのは、あのおばさんの先生。
一見怖そうだけど、先生の言うことを聞かなくても、地下の便所で化け物を倒しちゃえば減点どころか、得点アップというのは友を命がけで救ったというところから許せても、ほうきで勝手に飛んでいった後に、怒られるかと思ったら、シーカーに抜擢されてしまう。
あのおばさん先生をもっとうまく使えば、かなりいい感じになってたと思う。
魔法使い版フットボール
それから、中盤で軽く盛り上げる、魔法使い版フットボールみたいなシーンは面白いんだけど、あそこもっと詰めててもよかったんじゃないか。
あのルールが微妙。ルールっていうより、シーカーってポジションが。
それから、もっと実況者と観客カットをうまくあわせて、ポッターが杖に波乗り状態になったあたりで、盛り上げることはできたはず。あの空中戦のCGしかり、もう1つだった。
でも、透明マントはすごくうまくできてたと思う。あのマントを登場させるシーンを特に夜にしたのは成功だね。
「ハリーポッターと賢者の石」評価
★★★★★★☆☆☆☆