高見広春の同名小説が原作。2000年に公開された日本映画。
2000年の国内興行収入ランキング3位となる30億円を超えるヒットとなった。
(以下ネタバレを含みます)
感想
キャスティングが見事
設定を見てもわかるように、上っ面だけでも面白いし、入り込んで観ても面白い。
教師役のキタノはこれ以上ないはまり役だし、ビデオのお姉さん(エヴァの声優 宮村優子)の解説なんかは、あのバトルロワイヤルの空気を見事に表した配役だった。
『20世紀少年』の小池栄子的な。
安藤政信の怪演ぶりもすごく良かった。
教師役は武田鉄矢だった
ちなみに、この教師役は、武田鉄矢さんという線もあったという。
武田さんの技量であれば、たけしさんとはまた違った怖さを出せると思うけど、さすがにこの教師役で武田鉄矢さんというのは…というところで深作監督の「たけしとやりたい」という言葉で、北野武さんに決まったという。
深作監督と北野武さんといえば、『その男、凶暴に突つき』だ。
ここで深作監督が降りたことで、監督、北野武が生まれたわけだけど。
リアルな動き
生徒達の動きも、2時間で極めてリアルに描けている。
ピンとこなくて普通の奴もいれば、理解しきって狂う奴もいる。
その真ん中あたりでおろおろしてる奴らもいるし、逆に、活き活きしてきてしまう奴もいる。
究極の極限状態の中での3日間を、思春期の中学生達はどう過ごすのか、という。
一つ足すなら
キタノの「お前ら大人ナメてんだろ」という台詞は、響き的にいいんだけど、そこまでピンとこないのは、そこに至るまでの生徒達の日常、つまり学生生活の描写がなかったから。
そこをもうちょっと描いて欲しかった。
でも時間的に無理だったのかもしれない。そういうシーンが全くなかったわけでもないし。
でもそういうシーンがあればあるほど、もっと映画の主張が露呈されて、メッセージ色が強くなっていたのでは、とも思う。
新世紀教育改革法、通称BR法の世間的な認知度の解説も、ちょっと曖昧だった。あんな法律できたら生徒達も知ってるだろう。すでに何度か行われているようだし。
サントラ音楽「ヴェルディ『レクイエム』プロローグ」
テレビでもしょっちゅう使われる、ヴェルディ『レクイエム』。この映画がもっともハマってる気がする。
この映画は全体的にクラシックがよく使われている。残虐なシーンをスローにし、美しいクラシックで見せるという手法は、今となっては無難策とも言えるありがちな手法にはなったけど。
R-15指定問題を逆手にとってヒット
当時の衆議院議員らがこの映画の規制を求める運動をおこなったりしたことで、公開前からR-15指定問題で話題になっていたけど、結果それで世間一般的に認知されて映画がヒットしていったという経緯がおもしろい。
また、公開の翌2001年4月7日に「当時中学生で観られなかった諸君にこの一篇を贈る」と銘打った『バトル・ロワイアル【特別篇】』を公開し、卒業証書を劇場に持参すれば料金が1000円となるキャンペーンを実施するところなんかもいい。
中学生に見せたかった
でもおそらく深作監督は、この映画の主人公たちと同性代の中学生たちに一番観てほしかったと思う。
子どもたちは痛みを知らないから、痛みを感じるような映画というのは必要だと思う。
痛みを知らないから、加減もわからず簡単に人を傷つけることができてしまう。
一番頭角を表したのは柴咲コウ
ストーリーが未曾有の話にも関わらず、全体的にかなりうまくまとまっていて、本当に、捨てのシーンなんかないし、あっという間に時間が経過してしまうような、かじりつかせられた映画でした。
ちなみにこの映画でもっとも頭角を表したのは柴咲コウ。
もともとこの役は栗山千明がやることになっていたのを、深作監督がプロデューサー陣の反対を押し切って柴咲コウに変更。
柴咲コウの人柄から、絶対あの役は無理と関係者らは判断していたそうだけど、やっぱり巨匠は違う。
この映画はそんな巨匠の遺作となったわけだけど、深作監督の葬儀では、「人生で最も好きな曲」と語った、ザ・ブルーハーツの『1001のバイオリン』が流されたそう。
「バトル・ロワイヤル」評価
★★★★★★★☆☆☆