原作はニューヨーク州最高裁判所の元判事エドウィン・トレスの同名小説、およびその続編『それから』。
なので本作はたまに実話だと思われがちだが、実話ではない。
監督は『スカーフェイス』『アンタッチャブル』のブライアン・デ・パルマ監督、アル・パチーノ主演。
デ・パルマ監督以外、誰が撮るんだっていう映画。
そしてそこにアル・パチーノが来たら、つまらないわけがない。
1993年公開のアメリカ映画。
(以下ネタバレを含みます)
感想(ネタバレ)
映画界ナンバーワンの倒置法
この映画で挙げられるのは、やはり倒置法。
一番重要な結末を最初に見せている。
これがやりたいがために作ったな、という映画もあるけど、もしかしたらこの映画は、普通に撮っていって、最後に、あのラストーンを最初に観せちゃおうかって話になったのかもしれない…ってのはないかもしれないけど、それくらい見事な作り。
本編がものすごく良くできてるから、観ている中盤では冒頭のことなんてすっかり忘れてしまう。
だって、最終的には死んじゃうのがわかってるのに、後半の駅のシーンの緊張感たるや。完全に映画の勝ち。100m走で、ライバルが足を怪我したのをこっそり知って、ここぞとばかりにそいつに勝負挑んで負けた感じ。ハンデ負けするおもしろさ。
ショーン・ペンの存在感
この映画ではショーン・ペンの怪演っぷりがすごい。
なによりもまず髪型がすごい。今ショーン・ペンってハゲてないんだけど、あの髪は完全にほぼハゲてる人のテイだ。あの髪型は結局なんだったのか。
ただ、あの髪型から風貌から、役柄がハマりにハマりすぎてて、実在する人物のようだっだ。ショーン・ペンを知ってる人でも、言われなければ気づかない人は多い。
そもそもこの人はイケメンなのかなんなのかもよく分からない。老ければ老けるほどカッコよくなっていくタイプか。
でも若い頃はマドンナと結婚してたり、近年破局したけど、シャーリーズ・セロンと婚約してたり、私生活も飲酒運転やら暴行やらで逮捕歴もあったり、まさに人生まるごと演じてますといったところなのか…
ちなみに、ノーウォーク検事役のジェームズ・レブホーンは、この映画が公開される一年前の「セント・オブ・ウーマン」でもアル・パチーノと共演してる。どこか似たような位置関係で。
名シーンの数々
ドンパチ系ギャング映画の様相をしていて、全く違う。
クラブでのベニー・ブランコとのシーン、ラリーンとのシーン、堕ちていく友デヴィッド(ショーン・ペン)とのシーン、そしてゲイルと愛を再び育んでいくシーン…、ギャング映画のそれとは全く違った、人間ドラマ。
だから、最後に「悪いな、みんな」というのは、まるで観客に言っているかのようだった。
本当に見所が多い映画で、捨てシーンがない。
そしてあのラスト。永遠に観れるエンドロール。あの看板のイラストが踊るエンディング。あれはカリーとが描いた夢の世界。踊っている女性はゲイルなのか。
あのエンドロールは、ものすごく心地の良い虚無感に襲われる。
「カリートの道」評価
★★★★★★★★★☆